ワークスタイル変革は、デバイスやツールの導入だけで実現できるわけではなく、組織運営方法や人事制度など改革が必要となることが多岐にわたることから、その推進主体があいまいになりがちである。一方で、次世代のワークスタイルにおいてIT活用が重要な役割を担うことは疑いようがなく、IT部門に能動的な姿勢が求められる。
誰が「将来の働き方」を考えるのか
スマートデバイスの浸透や社会・産業のデジタル化に呼応して、ワークスタイル変革や働き方改革が、国内だけでなく世界的に注目すべき戦略テーマの1つとなっている。
2013年10月にカリフォルニア州で開催された米Constellation Research社の年次コンファレンス「Connected Enterprise 2014」では「将来の働き方」(Future of Work)が主要テーマの1つとなっていた。
CIOやIT部門向けのコンファレンスであるにもかかわらず、このセッションの登壇者3名のうち2名は人事・人材開発部門の責任者であり、参加者も人事部門や経営企画部門の責任者が多かった点に驚かされた。これは、日本では見られない光景といえる。
次世代のワークスタイルにおいてIT活用が重要な役割を担うことは疑いようがない。しかし、本当の意味でのワークスタイル変革は、デバイスやツールの導入だけで実現できるわけではなく、組織運営方法、意思決定プロセス、会議のあり方、人事評価制度、雇用・就労形態などに関する制度・ルールなど、改革しなくてはならないことが多岐にわたり、オフィススペースや設備・什器にも影響が及ぶ(本連載第23回【ワークスタイル 変革を考える(前編)】広範な視野で将来の働き方を描く)。
いうまでもなく、IT部門だけで変革を実現できるものではなく、経営者のコミットメントと人事・経営企画・総務部門、事業部門などの理解と協力が必要となる。しかし、その一方で、日本の企業において「将来の働き方」を考えている人事部門や経営企画部門がどれだけあるといえるだろうか。テーマが幅広く、管轄部門や利害関係者が多岐にわたることから、ワークスタイル変革の推進主体はあいまいになりがちと言わざるを得ない。
これまでと異なる
アプローチが必要となる
これまでも多くの企業において、ペーパーレス化、会議の円滑化やテレビ会議の導入、フリーアドレスの実施、コミュニケーション活性化のためのグループウェアや社内SNSの展開など、仕事の環境ややり方を見直すプロジェクトは数多く推進されてきた。