今回の失敗研究は、特にマネジャーの性格や方針により考え方が異なるため、異論があるかもしれないが、Management by Exception(例外管理)がデジタルマーケティングの運用には不可欠だという観点から、組織的な失敗を考察する。

アクセス解析の悲劇

 アクセスログ分析を行う製品は、Adobe Analytics、Universal Analytics、RTMetrics、Web Trendなどがあるが、連載第1回でも書いたように、アクセス解析ツールで「可視化」「見える化」するにはたくさんの時間を使うが、見る方もたくさんの時間を使う。

「可視化」「見える化」の目的は、単に現状の「What」のためなのか、見た人が、「Why(原因)」や「How(対処法)」に至るように可視化されたものなのかにより仕事の成果が違ってくる。

「What」を追求した「可視化」「見える化」は、自己満足に終わる傾向が強く、根を詰め目が真っ赤になっている人をたまに見かける(根を詰めただけのビジネス的な効果があればいいいのだが…)。

パワーポイントの悲劇

 ある企業では、IT部門のガバナンスの考え方とコスト(時間を含む)の問題から「PCにバンドルされたパワーポイントを使い、社員全員がプレゼン資料を作成する必要ない」と判断され、プレゼン資料を作成する一部の人だけがパワーポイントを使え、他の社員のPCにはビューワーのみが導入された。

 最近は、FacebookのCOOシェリル・サンドバーグ氏、LinkedInのリード・ホフマン氏、Amazonのベソス氏など、IT界を代表する人達が社内プレゼンにパワーポイントの使用を禁止令を出している(「Facebook、LinkedIn、Amazonが、社内でのパワーポイントの使用を禁止」)。

 禁止する理由はいくつかあるのだろうが、社員全員がパワーポイントでビジュアル化する膨大な時間のムダと、ロジックなどの中身を軽視し、見てくれ(ビジュアル)重視になる、という本末転倒の状態に無意識に陥ることを防ぐためだろう。さらに本質的な問題として、ビジュアル化(偶像化)することによる創造力・想像力の低下を懸念しているのではないだろうか。

 さらに、最近は「TEDかぶれ」(「社内でスーパープレゼンテーションは必要か?感化された“TEDかぶれ病”につける薬」)というのもある。社内プレゼンをウロウロしながらTED風に語ることにかぶれた人が中身のないプレゼンをする悲劇を指すが、「アクセス解析の悲劇」「パワーポイントの悲劇」「TEDかぶれの悲劇」を組織の「三大悲劇」と位置付けてもいいのではないだろうか。