自分が動くだけではダメ

 現場に行くのはとても良いことです。まず現場で状況をつかまなくてはいけません。しかしそれは自分が動くだけのことです。

 同時にやることがあります。つまりリーダーシップの発揮です。そのための決断を速くしなければなりません。部下を動かし、関係先を始め上司の工場長や社長に連絡することです。

 故障の原因が分からない、解決のメドが立たないなど、緊急事態です。

 たぶんこの課長は、現場で状況をよく見て判断しようと思ったのでしょう。しかしそれでは遅すぎることに気づかなければなりません。

 現場を見て、それから機械の修理が分かる機械メーカーの技術者に来てもらうのでは一時間も二時間も時間をロスします。それよりまず部下からの報告を受けたときに、事態が現場では解決しそうにないと判断できるはずです。

 だったらまず、そこで急ぎの電話を機械メーカーに入れて技術者の手配を頼んでおくと、修理の対応が早くなります。

 そして工場長にも現場に来てもらったら、事態の把握がいちどにできて、工場全体の生産予定を修正できます。社長にも来てもらえば、出荷についても変更を指示してもらえます。

 全体の立場から考えると、一歩も二歩も先に進んだ手が打てます。リーダーシップをとるとは、つまり何をすべきかを決断して、部下や関係者に自分の意思を伝えることです。

「課長、どうしましょう。機械のトラブルで、解決のメドが立ちません」

「そうか、分かった。ともかく現場へ行こう。その前に、応援態勢を組むことだ。主任は、機械メーカーの技術者に来てもらうように電話してください」

「ハイ、かしこまりました」

 部下にできることは部下に指示して部下を動かしましょう。そのために、何をするべきかあとで考えようとしないで、先に考え指示を出してください。

 すなわち、決断を速くするのです。そのために、まず考えましょう。そして部下にやることを伝えましょう。管理者は、自分でなければできないことだけをやってください。

 決断を速くやろうと思うだけで、考える習慣が身に付きます。そして周囲を動かすリーダーシップが発揮できます。