携帯端末業界で国内首位のシャープが、欧米市場への“本格進出”を検討している。シャープは、昨年6月に中国市場での携帯電話事業本格参入を決めたばかりだ。その果実を摘み取るのもまたず、海外市場の販路開拓を急ぐ。にわかに、海外拡大志向を強め始めたのはなぜか。いかなる勝算があるのか。
今週1月7日、世界最大級の家電見本市「インターナショナル CES」が、米国ネバダ州・ラスベガスで開幕する。
この晴れやかな舞台で、ある新製品が鮮烈なデビューを飾る予定だ。ネットユーザーのあいだでは待ちわびる声が早くから上がっていた。
米マイクロソフトが初めて手がける、基本ソフトオープン型のスマートフォン(多機能携帯端末)である。以下では、マイクロソフト・フォンと呼ぶ。
携帯端末向け基本ソフトWindows Mobile搭載の新機種であり、むろん米アップル製iPhoneや米グーグルのアンドロイド搭載端末の対抗商品だ。
2008年2月、マイクロソフトは、携帯端末向けソフトを開発する米デンジャーを買収した。その有形無形の資産を生かした新たな戦略に注目が集まっていた。それが明らかになる。
ちなみに、デンジャーはアップルの出身者が2000年に創業した会社だ。一般消費者向けスマートフォンの「サイドキック」は丸みを帯びた斬新なデザインが人気で、ヒット。マイクロソフトのみならず、グーグルなど複数の企業が買収に名乗りを上げた。
シャープはこのマイクロソフト・フォン発売をチャンスととらえ、北米市場へ本格参入を果たそうとしている。シャープは、マイクロソフト・フォン“第1号”のベンダーの一つなのだ。かつて、シャープはデンジャーに情報端末を納入していた経緯があり、その実績を買われたのかもしれない。
技術的に超えるべき課題が多く、CESへの出展には間に合わなかったが、「早ければ今春にも製品が見られるだろう」(シャープ関係者)という。
それだけではない。シャープは欧州市場における“本格進出”も仕掛けている。スマートフォンを突破口にした提携先を模索中だ。その有力候補と見られているのは、以前から取引関係のある英ボーダフォングループといった大手通信会社だ。
欧州では、通信会社の持つネットワークの範囲が国境を越えており、寡占化も進んでいる。
仮に、大手通信会社への製品納入に成功したら、欧州エリアの大部分をカバーできることになり、効率的な販路拡大戦略となる。