来年度予算編成の「ムダ」を洗い出すため、政府の行政刷新会議が「事業仕分け」を行なっている。財政赤字の膨張を避けるうえで重要な作業だ。

 しかし、子育て支援策などの財源確保のために旧来の支出を削減していくと、利益を得ていた人びとから怨嗟の声が噴出する恐れがある点は心配される。

 元佐賀市長の木下敏之氏が、昨年出版した『なぜ、改革は必ず失敗するのか』に示唆に富む経験談が載っていた。

 同氏は農林水産省の官僚から地元の行政を変革するために1999年に佐賀市長選挙に出馬し、当選した。しかし、2005年の選挙で敗れている。

 「佐賀の場合、行政改革を急いで行い、浮いた財源を子育て支援や教育、新産業の育成に使いました。しかし、教育の成果も、建設業に代わる産業の育成も、すぐにあらわれるわけではありません」

 「改革とは、既得権益を次から次にはがしていくということです。一方で、改革で得た利益は特定の層に集まることはなく、薄く広く配分されるにとどまります。これで『強力な味方』ができるはずがありません。味方は増えず、それどころか敵が増える」

 「つまり徐々に強力な反対票が形成されていくということになります。これが改革というものが本来的に抱える厳しさだと私は思っています」