明日までにエクセルでデータ分析資料を作成しなければならない……焦って作業をした結果、とんでもない計算ミスをしてしまった! エクセルで作業するときは、しっかり作業時間を確保することが大切。 『ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術』の著者・熊野整氏による連載第10回。

 エクセルの計算ミスをなくすためには、テクニックだけではなく、時間の使い方も大切です。

 具体的には、エクセルの作業にはとにかく時間を十分にかけてほしいということです。焦って作ったエクセルほどミスが多くなる、というのは間違いのない事実です。時間にゆとりを持って計算をしていかなければミスが起きます。

 作業時間に余裕がないと計算が雑になるし、チェックも不十分になります。そうすると計算ミスが増え、「エクセルはやっぱり難しい。自分には向いてないな」と、苦手意識を持ってしまうわけです。苦手意識を克服するには、時間に余裕を持ってエクセルに向かうしかありません。1つ1つの計算をしっかりやり、十分にチェックしてミスのないエクセルを作る。それがエクセル作業の王道です。

 そこで大事になってくるのが図2-22の左上の部分、「エクセルの作業時間が少ない」を「エクセルの作業時間をしっかり取る」に変えることです。そうすればチェックもきちんとできるし、ミスも減ります。そうなるとエクセルに自信が持てるようになり、「じゃあ、もうちょっと時間を使って、しっかりやろうか」とモチベーションが上がっていきます。最初に十分な時間をかけて、良いサイクルを生み出すことが重要です。

 十分な時間の取り方について言えば、作業時間はできるだけまとめて取ることをオススメします。エクセルの作業をしている合間に打ち合わせがあったり、顧客とのミーティングがあったりすると、エクセルの作業が細切れになり、作業に戻ったときに「あれ、どこまで計算したんだっけ?」「この計算チェックしたっけ?」ということになってしまい、ミスにつながるのです。エクセルの作業は誰にも邪魔されない環境で、集中して一気に作り上げていくほうが、ミスが起きにくいです。

 筆者の場合は、エクセルの計算、特に収益計画の作成のような大きなエクセルの計算をするときには、週末を使って一気に作業をします。週末であれば、ミーティングがなく、まとまった時間が取れるからです。

 さらに具体的に言うと、その日は昼まで寝て疲れをしっかり取り、13時頃に出社して、誰もいないオフィスで夜中まで、ときには朝まで、一気にエクセルの作業をします。途中で終わらせることはせず、最後まで作りきります。中途半端な状態で作業を終わらせると、次に作業を再開するときに混乱しがちだからです。それだけ集中して作業をすると、エクセルがスムーズに、そしてストレスなく進められます。孤独な作業ですが、平日の忙しい時間に焦って作業をし、ミスして苦しむことを考えれば、かなり気が楽ですね。

 それから、作業完了までのスケジュールについてですが、これも余裕を持たせることが大切です。エクセルは最後のほうでミスが起きやすい。計算が進んでいって、最後の最後で致命的なミスが見つかる、ということもしばしばあります。ですから、エクセルはとにかく前倒しで作業をしたほうがいい。

 理想を言うと、「いちど作成したエクセルを、もういちど最初から作り直せるくらいの余裕があるスケジュール」がよいでしょう。エクセルを作っていると、途中で「最初からこうしとけばよかった。作り直したいな」と思うことがよくあります。これはエクセルのスキルを向上させる大きなチャンスです。ぜひ作り直して、納得のいくエクセルを追求してください。失敗を乗り越えて再作成されたエクセルは、以前よりずっと質が高いものになります。

 たとえば1週間後までに収益計画を作るのであれば、4日後くらいまでには全部作り終えて、あとの3日でしっかりチェックし、必要があれば修正をしていく。それくらいの余裕を持っていれば安全です。繰り返しますが、最後の最後で焦ることが、いちばんミスを招きやすいのです。必ず前倒しのスケジュールを組んでください。