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原油価格の続落を背景に、先週15日にルーブルは対ドルで60台に乗せ、16日には80ドルまでの暴落を演じて、世界の資本市場の眼をロシアに釘付けにした。株式市場への売りが強まる「リスクオフ」の嵐の中で、ドル円が一気に115円台まで下落するなど、市場には1998年のロシア危機の再来に怯えたパニックの気配も感じられた。
今日、ロシア経済は厳しい状況にある。プーチン大統領は「危機が克服されるまで最悪2年はかかる」と述べた。欧米の対ロ露制裁がすぐに緩和される見通しは乏しく、原油価格の更なる下落を予想する向きもある。やはり歴史は繰り返されるのだろうか。
ロシア国民もドル買いに走る
RPテック(リサーチアンドプライシングテクノロジー)株式会社 代表取締役。1955年生まれ。東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカーストラストを経て、チェースマンハッタンへ移籍。チェース証券取締役東京代表を経て、2001年4月に独立、現在に至る。著書に『投資銀行バブルの終焉―サブプライム問題のメカニズム』(日経BP社刊)、『12大事件でよむ現代金融入門』(ダイヤモンド社)などがある。
この「ロシア売り」は、先週突然に始まったわけではない。年初以降1ドル30ルーブル前半の水準で推移していた為替相場は、ウクライナ問題に端を発する欧米の対ロ制裁強化にはそれほど動じることは無かったが、原油価格の下落傾向が顕著になるにつれて下落し始め、10月に40台を突破するとその勢いが止まらなくなってきたのである。
10月末にはロシア中銀がルーブル安と物価上昇を抑制するために1.5%の利上げを行い、11月には通貨バスケット制度の廃止を発表して、為替介入額の上限を定め一定の相場変動を容認する姿勢を見せたが、その中途半端な策がルーブル売りを加速した印象が強い。
12月11日の1.0%の利上げも通貨防衛としての明瞭なメッセージとは言えず、昨年6月に大統領補佐官から横滑りでロシア中銀総裁に就任したナビウリナ女史の若さと未経験が露呈したようにも思われた。
その過程で、ロシア国民が自身の資産を外貨に替える動きも強まり、銀行にドルを求める人々の長い行列ができたという。ルーブル売りを主導したのは投機筋だけではなかったのだ。