世界景気の行方、為替や原油相場など外部環境の不透明感が強い。しかし株価が大きく売り込まれたときこそ、長期投資の観点で割安銘柄をジックリ仕込みたい。
割安診断の代表的な指標は2つある。1株当たりの利益と株価を比べたPERと、1株当たりの純資産と株価を比べたPBRだ。「利益と比べて割安か?」を見たものがPERで、「資産と比べて割安か?」を見たのがPBRである。
この2つは、場合に応じて使い分けが必要だ。たとえば足元のように景気や企業業績の行方が不透明な時期にはPERは使いにくい。10月からの中間決算発表では例年7割程度が業績の修正を行なう。一般にはPERが10倍程度より低いと割安株ともいわれるが、業績下方修正でその根拠そのものが吹き飛んでしまうケースもある。
そこで、もう1つのPBRに注目したい。ただ、企業の保有する土地や建物などの資産価格が大きく下落する場面ではPBRも弱くなる。
実際、大手銀行・証券が破綻した1997年当時はかなり弱かったが、その後の資産価格下落が続くなかにあってPBR効果は復活した。環境が不透明な場面では、やはり株式の価値のよりどころとなるからだろう。
PBRはより保守的な指標ととらえられる。ただし、単純に使うのではなく、より効果的に割安株を選別するための工夫を紹介する。
じつは2000年以降、日米の学者間でPBRの分解が行なわれている。01年に米会計学者のビリングスとモートンの2人がPBRを3つに分解した。1つ目は企業自体が持つ長期的な部分、2つ目が短期に株価が売り込まれた部分、そして3つ目がそれらで分解されない残りである。
このうち、長期的な部分は投資尺度としての効果が期待できないが、短期に売り込まれた部分である「ラグ」と、それら2つで分解できない乖離である「レス」については、株価がその乖離を修正する動きからリターンが期待できる。