-経済産業省「平成26年度総合調査研究(GCMおよびABLの現状と普及促進に向けた課題の調査等)」との連携調査より-
企業の海外売上高比率は年を追うごとに増加しているが、中国・アジア新興国を主体に進出した国の規制や商習慣の違いと時間的・空間的に拡大したサプライチェーンが原因で、思うような財務管理ができないというのが、中国・アジアに進出した企業のCFOが抱える悩みではなかろうか。今回のサーベイでは、日本企業の海外拠点を含めたグループ・ガバナンスや事業管理レベルの強化に向けた取り組みがどこまで進んでいるか、その実態を把握したうえで、着実にグループ統治力と財務マネジメント力の強化を図っている企業と、強化が思うように進まずに苦戦している企業との間で、収益力にどのような差が生じているのかを分析する。
キャッシュフローへの関心高まる
まず、企業が財務面で何に関心を持っているのか聞いたところ、「非常に関心あり」という回答が60%を超えて最も関心が高かったのが「キャッシュフロー」である。「関心あり」と回答した企業とを合わせても90%以上に及び(図1)、従来は損益情報にとどまりがちであった日本企業の関心事が、ここ数年の海外展開の中でキャッシュフローに着目してきたことがわかる。
前回の調査結果に基づいて寄稿した一昨年の『CFO FORUM』第46号(2013年9月号)では、アジア新興国への展開を進める日本企業にとって、資金収支予測の精度向上と債権債務の管理強化、債権回収状況の営業実績への反映、SCMの見直しと、もっとキャッシュフローに着目した財務管理強化の必要性をCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)という観点から警鐘を鳴らしたが、日本企業の財務管理もいよいよ本格的に動き出したのだろうか。