こうして、中期的に経済の革新を図りながら、短期的には景気対策に力を入れているのが今の韓国の姿です。しかし、景気対策にはなかなか効果が見えず、政府の対策には手詰まり感があります。

――景気対策に手詰まり感がある背景には、どんな課題があるのでしょうか。

 第一に、民間消費の伸び悩みの原因となっている家計債務の増加に対して、一貫した対応ができないことです。家計債務額(14年の家計債務額の対可処分所得比率は134.7%)の中身を見ると、住宅ローン、子どもの教育ローン、退職後の新規事業資金の借入れなどです。足元では、景気対策として行われた利下げと不動産融資規制の緩和に伴い住宅ローンが増えています。

 不動産融資規制の緩和は、政府の景気対策の中でも比較的効果が出ており、不動産市場には回復傾向が見られるものの、家計債務を増大させる要因にもなっています。家計債務が警戒水準に達しているためか、中央銀行総裁のイ・ジュヨル氏は、就任当初、利下げに必ずしも積極的ではありませんでした。政府の強い要請を受けた利下げと見ています。

 住宅ローンは中所得層が中心ですが、低所得層では生活費を補填するための借入れや、債務の利払いのための借入れも増えており、今後の動向に注意が必要です。

 第二に、大胆な財政出動がしづらいことです。韓国は伝統的に、財政に対して極めて保守的な考え方を持っています。歳出を歳入の範囲内に収めるという財政均衡主義をとってきたがゆえに、政府の財政赤字は対GDP比3割程度と、先進国の中でも比較的低く抑えられていますが、一方で景気が悪化しても財政出動がなかなかできないという側面があります。最近では景気の低迷で、歳入も伸びていません。

年金給付に頼れない韓国人の現状
高齢者の貧困率はOECD中で最高に

 そして第三に、福祉関連の支出が増加していることです。韓国は2018年に、全人口に占める高齢者の割合が14%以上になる高齢社会に入りますが、多くの高齢者が厳しい生活を余儀なくされています。

 OECD統計によれば、韓国の高齢者の相対的貧困人口率(所得分布における中央値の50%に満たない国民の全体に占める割合)は47.2%と、OECD加盟諸国の中で最も高い(平均は12.8%)のが現状です。高齢者の貧困の要因として、企業の退職年齢が早いこと、国民年金保険制度の導入遅れによる年金給付額の低さ、家族の扶養機能の低下(核家族化、若者の就職難)などが挙げられます。特に問題なのは年金給付額の低さです。

 日本、米国、ドイツなどのOECD諸国を見ると、高齢者は収入源をほとんど公的年金に依存しています。ところが韓国の場合は、年金給付額が低いためそれに依存できず、何らかの形で仕事を続けて収入を得ている人が多い。就業者数に占める自営業者の割合を見ると、韓国はOECD諸国のなかで非常に高くなっています。仕事による収入に続けて高いのが、子どもからの援助です。

>>後編『韓国経済急減速の真実 「強い韓国」はどこへ行ったのか?(下)』に続きます。

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