社会が変化するとき、
経営戦略を変える必要がある

 しかし、もしも製版事業を続けたら、今後の展望は開けません。実際、先細りを感じながらも、アナログ製版事業を続けた同業他社のなかには、廃業するところがたくさん出てしまいました。

 このように、社会情勢が変わりお客さまが求めるもの(=お客さまのニーズ)が変わるときこそ、経営者が明確にしなければならないことがあります。それが、何をやるべきか、何をやめるべきかを考えることです。

 プリントパックの場合は、「印刷事業に特化して、製版事業をやめる」という決断をしました。しかも、新たに出発した印刷事業では、それまで自社を脅かしていたパソコンやデジタルデータを味方にする戦略をとったのです。ますますのパソコンやインターネットの発達を見越してのことです。SWOT分析でいう、Threat(脅威)をOpportunity(機会)に変えたのです。

 印刷1本に絞ったことにより、種類も、サイズも豊富に揃える、低価格で提供する、納期を早くする、不明な点はフリーダイヤルで問い合わせできるなど、一切の妥協をせず、印刷の品質や、利便性を追求することができました。

 逆に、低価格で高品質の印刷を提供すれば、お客さまからの注文が増え、大量生産が可能となり、紙やインキのムダも極力減らせるうえに、段取り替えの手間も減り、ますます低価格の商品を提供することが可能になりました。

 そして、「安い、早い印刷」、これこそが、お客さまの求めるものだったのです。だから、印刷不況と言われるなかで、この十数年で売り上げを50倍に伸ばすほどの成長を遂げたのです。

 ところで、「製版事業をやめる」と、それに携わっていた従業員の中には転籍などをしなければならない人も出てきますから、内部からは大きな反発があるはずです。このとき経営者は、会社の中心を、「社員に置くのか、お客さまに置くのか」の判断を迫られます。