インバウンド(訪日観光客)の消費が拡大し続けている。メディアには「爆買い」の文字が躍り、中国をはじめとする近隣諸国や欧米各国のみならず、イスラム教圏からの旅行者も多く見かけるようになった。彼らを惹きつける日本の魅力とは何なのか。また、インバウンドの商機をつかむためにどのような仕掛けがなされているのか。自治体、企業、商店街への取材を通して、爆買いを仕掛ける人々の「スゴイ視点」を探った。(取材・文/プレスラボ・多田慎介)
1-3月期は前年同期比64.4%増
激増を続ける「ガイジン消費」
両手に抱え切れないほどの買い物袋を下げて、街を歩く人たち。百貨店や家電量販店で、必ずと言っていいほど聞こえてくる外国語――。
円安基調の持続を背景に、中国人をはじめとしたインバウンド(訪日観光客)の消費が堅調だ。質の良い日本製品を求める彼らの旺盛な消費意欲を見て、メディアには「爆買い」という言葉が躍る。
一昨年にタイとマレーシア、昨年にはインドネシアからの観光客にビザを免除する誘致策がとられ、今後は経済成長を続けるイスラム教圏からのさらなる訪日数増加も期待されている。
4月30日に観光庁が発表した『訪日外国人消費動向調査』の結果によれば、平成27年1-3月期の訪日外国人による旅行消費額は7066億円。前年同期比(4298億円)で実に64.4%増という高い伸びを見せた。
外国人が足を運ぶのは、秋葉原の電気街や銀座のブランドストリートだけではない。その裾野は全国各地へ広がっている。今後も増え続けるであろうインバウンド消費の拡大を、新たな商機に変えるのは誰なのか。独自の取り組みを進める自治体や商店街、企業を取材した。
新幹線開通で勢いづく金沢市
長期滞在者を狙う「ブロック戦略」
3月14日に営業を開始した北陸新幹線により、東京と最速2時間28分で結ばれた金沢市。観光バブルに沸く地元では、インバウンド誘致にも力を入れている。
市の観光交流課によれば、代表的な観光地である兼六園の入場者数統計から見た訪日観光客の内訳は、「台湾からの旅行者が半数以上を占め、圧倒的に多い」という。石川県内の小松空港と台湾を結ぶ直通便が毎日運航していること、日本統治時代の台湾で農業水利事業に大きく貢献した金沢出身の技術者・八田與一(はったよいち/1886-1942)の知名度が現地で高いことなどから、もともと台湾人観光客からの人気が高いのだそうだ。