これまで、オヤジ世代にかかわる環境変化や年金制度改革についてお話ししてきました。これらの変化や改革は、オヤジの老後にどの程度影響を与えるのでしょうか? 今回は平均的なオヤジを例にとって、その影響を見ていきたいと思います。

オヤジと公的年金

 ここでは、妻が専業主婦の50歳のサラリーマンのオヤジを考えてみます。女性や高齢者の社会参加が進むなどの標準的なシナリオ(国の財政検証におけるケースE)の場合、平成41年度には年金額が月額で22万9000円、所得代替率(平均賃金に対する年金の割合)は56.8%となります。現在の65歳の人が受給している年金額が21万8000円で所得代替率は62.7%ですから、所得代替率は6%近くも下がってしまうのです。一方で、受け取る年金額が増えていますね。これは、この間に賃金の上昇を見込んでいるからです。「なんだ、年金額は増えるのか」と安心してしまうかもしれませんが、今のサラリーマンの平均賃金(34万8000円)対比で考えると19万8000円となり、実質的には約2万円程度下がることになります。女性や高齢者の社会参加が進まない悪いシナリオ(ケースG)では、所得代替率が54.4%まで下がるため、実質的な年金額は18万9000円まで下がります。これが実現すると今の65歳より約3万円も少なくなってしまうわけです(厚生労働省のデータに基づきアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成)。

 早期に受給者と現役世代のバランスを改善し、現役世代の将来の年金額を確保するための施策として「マクロ経済スライド」がすでに導入されています。しかし、デフレ下では発動しない現在の仕組みでは、前述のケースGのような悪いシナリオが実現すると、将来の所得代替率が大きく下がってしまいます。早期にバランスを改善すべく、デフレ下でもマクロ経済スライドが実行できるよう、社会保障審議会で議論されてきましたが、残念ながら完全には実現されませんでした。これでは、デフレが続く限りいつまでたってもバランスは改善されません。これから年金を受け取る世代には歯がゆさを感じる人も多いのではないでしょうか。