タカタのエアバッグ問題が再燃し始めた。5月13日以降、日系自動車メーカー7社が新たにリコールを実施。19日には米当局がリコール対象地域を全米に拡大すると発表した。(週刊ダイヤモンド編集部 池田光史)
まるで“勧善懲悪”映画のワンシーンを眺めているかのようだった。
「タカタはこれまでエアバッグの欠陥を認めてこなかった。しかし今日、それが変わった。(Up until now Takata has refused to acknowledge that their airbags are defective, that changes today.)」
現地時間の5月19日、アンソニー・フォックス米運輸長官は記者団を前に、そう高らかに“勝利宣言”した。
この日、米運輸当局(NHTSA)は「タカタが一部自社製エアバッグの欠陥を認め、全米リコールに同意した」と発表。これを受けて各種報道でも、全米リコールに消極的だったタカタがついに“降伏”したと言わんばかりの見出しが躍った。
米国では2014年6月以降、タカタ製のエアバッグが暴発して死者が出る事故が数件発生し、タカタに対する非難が高まっていた。14年11~12月には米上下両院で公聴会が開かれ、さながらタカタの“公開処刑”と化す場面もあった。
そして、この公聴会でも焦点となったのが、リコール対象を「全米に拡大するかどうか」だった。
エアバッグを膨らませる火薬(「インフレータ」と呼ばれるガス発生剤)は湿気に弱いとされ、実際に不具合は高温多湿地域で発生していた。そのため、この時点ではそうした地域限定でリコールを実施中で、タカタもその必要性を認めていた。
ところが、対象地域に含まれていない米ノースカロライナ州でもエアバッグ暴発事故が起きたことが発覚(死者は出ていない)。これを受けてNHTSAや米議員らはリコールの全米拡大を要請するも、タカタは科学的根拠に乏しいと反論。その姿勢にさらなる批判が高まり、タカタ・バッシングの様相を呈していく。そうした政治ショーの極め付きが、今回の“勝利宣言”だったといえる。