企業を取り巻く環境がめまぐるしく変化している現在、日本企業には厳しい局面を打開できるリーダーが求められている――。こう語るのは、マッキンゼー、KPMG、アリックスパートナーズなどで多くの企業改革をリードしてきた野田努氏。このインタビュー後編では、現場のリーダーにどんなスキルが必要なのか、どうすれば次世代のリーダーを育成できるのかを語ってもらった。(構成:谷山宏典)
――難局を突破するための有事のリーダーシップとして、著書『プロフェッショナル・リーダー』では3つのカテゴリ、9つのスキルを挙げています。
リーダーに求められるスキルは、もちろんそれですべてではありませんが、少なくともこの9つのスキルを身につけていれば、現場のリーダーとして業績改善や事業統合などに対応できると思います。
第1のカテゴリは「問題に取り組むスキル」で、
「1. 本質的な問題を短時間で見極める力」
「2. 複数の経営課題に適切に優先順位をつける力」
「3. 強い危機意識を持ち続ける力」
という3つが含まれます。
組織が何らかのトラブルを抱えているとき、その原因は幾層にも分かれて存在しています。目に見える事象だけではなく、その背後に根本的な問題が隠れていたりするのです。組織を改革するには、リーダーはまず何よりも表には現れていない「本質的な問題」を明らかにしなければなりません。真の問題を特定せず、表層的な事象に対処するだけでは、堂々巡りを繰り返すだけで、いつまで経っても苦境から脱することはできません。
本質的な問題が明らかになったら、次は施策の実行です。この段階では、リーダーは現場の人々を巻き込んでいかなければなりません。組織の変革は、現場の力があってこそできるのです。ここで第2のカテゴリ「実行を推進していくスキル」として
「4. 論理的にコミュニケーションを取る力」
「5. スピード感を持って実行を推進する力」
「6. 正しい現状認識に基づき意思決定を行う力」
が求められます。
リーダーが「やる」と意思決定した改善策を現場の人々に実行してもらうには、彼らに自分たちがやるべきことを納得してもらう必要があります。合意形成に欠かせないのが、論理的なコミュニケーションです。また、リーダーは一方的に指示を出すだけではなく、相手の主張にも真摯に耳を傾けなければなりません。相手の考えや立場を理解したうえで、こちらの要望を説明することで、合意形成がしやすくなるからです。