――プロフェッショナルなリーダーになるためには、平時においてはどんなことを心がけて、行動すればいいのですか?

自ら「修羅場」に飛び込んで、果敢にチャレンジすることです。挑戦の経験の積み重ねが、優れたリーダーになるための必須条件だと思います。

――修羅場とは?

基本的には「大きなリスクが伴う状況」を指します。文字通りの修羅場はここまで述べてきた企業再生、事業や人員のリストラなどの厳しい局面のことですが、いきなり本当の修羅場に飛び込んでも対応は難しいでしょう。そのため、日々の業務の中で仕事のリスクや負荷を自ら高めて、いかに疑似的な修羅場を作っていくかがポイントになります。

たとえば、上司から与えられた仕事を、指示通りにこなすのではなく、自分なりに目標や課題を設定する。「これまで2日間かけていたことを、1日半で終わらせる」とか。高いハードルを設定すれば、当然今までのやり方では実現できません。「どうすれば、目標を達成できるのか」と考え、実行する必要が出てきます。課題を設けて、施策を実行し、成果が出なければやり方を修正する。こうしたプロセスを繰り返していく中で、人は成長していくのです。

上から与えられた仕事ではなくても、「今、会社にはどんな問題があるだろう?」と、自ら課題を見つけて、改善策を検討・実行することも大切です。それは「本質的な問題を見極める」というリーダーのスキルにも直結しています。幸い、今の日本企業においては、そうしたチャレンジのネタはいくらでも見つかるはずです。

――一方、現場のリーダー不足に悩むマネジメント層は、どうすればリーダーの育成ができるのでしょうか?

負荷のかかる仕事を部下にやらせる点は同じです。普段は1週間かけている仕事を「3日でやってくれ。やり方は任せる」と指示することで、部下は「時間配分をどうするか?」「効率化のための方法は?」と考えて、動くようになります。

加えて、育成という観点から言えば、的確なインストラクションも大切です。

課題を設けるにしても、「5日でやらせる」のか、それとも「3日でやらせる」のか。ハードル設定のさじ加減は難しいと思います。また、困難な課題を与えたとしても、上司から「ああしろ、こうしろ」とすべて指示してしまうと、せっかくの負荷もリスクもなくなってしまい、部下はただの作業員になってしまいます。かといって、完全に放置してしまうと、部下は途方に暮れてしまう。関与すべきところではしっかり導いてやり、「ここは任せてもいい」と判断したら、口を出さずに見守る。適度な距離感を保ち続けるのです。

結果に対するフィードバックも欠かせません。部下を修羅場に放り込んだとしても、はじめから100点満点の成果が出せることは稀です。上手くできることもあれば、できないこともあるでしょう。できなかったことに対して、ダメ出しをするだけではなく、上司がきちんと添削やアドバイスをしてあげて、そのうえで再挑戦をさせていく。フィードバックを手間暇かけて丁寧にやってこそ、育成は実を結びます。