ユーロ圏における銀行から民間への貸出残高は2007年末でGDP比145%だった。米国は63%だ。ユーロ圏の銀行セクターは、米国よりも2倍以上重要な役割を負っている。それゆえECBは、FRBと異なり、銀行を支援する政策を中心に行なってきた。

 「4400億ユーロ(約59兆円)を超える資金供給を行なった中央銀行はかつて存在しなかった」。7月2日の記者会見で、ECBのトリシェ総裁は、6月下旬に実施した金融機関に対する初めての一年物資金供給オペを「ものすごい成功だった」と自画自賛した。

 確かにすごい資金供給量だ。これにより、ユーロの超過準備は激増した。6月10日(準備預金初日)から6月24日までの超過準備の平均は57億ユーロだった。

 一方、このオペがスタートした6月25日から7月6日までの平均は2760億ユーロだ。

 一年物オペは、1%の固定金利、金額無制限で実施された。1%という金利はECBの政策金利である一週間物資金供給オペの金利と同じだ。この大盤振る舞いが人気を集めたのである。

 入札に参加した金融機関は1121社にも上った(一週間物オペの場合、最近は400社前後)。中小銀行も一年物の資金を借り入れたようだ。

 超過準備が突然これだけ増加すれば、ユーロの銀行間のオーバーナイト平均金利(EONIA)は急落する。最近は0.3%台で推移している。0.5%の利下げがあったかのようなインパクトだ。