「幸せ」のために身を削る努力をするのが、プロフェショナル

1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属され、多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン(株)(現LINE(株))入社。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE(株)代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel(株)を設立、代表取締役に就任。

 ハンゲーム・ジャパン株式会社が設立されたのは2000年。

 当時すでに、韓国で1000万人ものユーザーを獲得していたPC向けオンライン・サービス「ハンゲーム」を、日本で展開するためにつくられた会社です。

 オンライン・ゲームには大容量通信が欠かせませんから、ブロードバンドの整備が遅れていた日本には同様のサービスはほとんどありませんでした。いわば、まっさらな市場でした。そこに、無料でゲームを提供することでユーザーを増やし、ゲーム内の少額課金などでマネタイズするという斬新なビジネスモデルを持ち込んだのです。

 僕が入社したのは設立3年後。すでに100万人を超えるユーザーを獲得していましたが、収益化にはほど遠い状況でした。このビジネスモデルを成功させるには、ユーザーを増やすしかありません。そこで、ユーザー獲得のために奔走しました。

 ヒントになったのはテレビ。無料ゲームは、視聴者が無料で楽しむことができるテレビに近いのではないか? テレビがいちばん盛り上がるのは生放送。であれば、リアルイベントを開催すればいい。それをネット動画で中継して、来場できない人もネット上で参加できるようにすれば盛り上がるはず……。そう考えたのです。

 そこで、毎週のようにイベントを実施。ユーザーにも集客目標を公開して、友達を連れてきてくれるようにお願いしました。ユーザーも、みんなと一緒に盛り上がって楽しみたかったのでしょう。まるで、仲間のように力を貸してくれました。

 そして、口コミでイベント参加者が雪だるま式に増加。当初、イベント開催時のサイトへの同時接続者は数千人でしたが、1万人、5万人と増えていったのです。悲願だった10万人を集めたときには、「パソコンの前で泣いた」と掲示板に書き込んでくれたユーザーもいました。

 これは、僕も素直に嬉しかった。

 なぜなら、この瞬間のために必死にやってきたからです。設立間もないベンチャー企業ですから、人手が足りない。少ない人数で、ゲームの開発からプロモーション、営業までやって、かつイベントも毎週のように実施するわけですから、毎日のように雑居ビルのワンフロアに泊まり込んで、寝る間も惜しんで働きました。「ツライな……」と思ったこともヤマほどありました。でも、だからこそ、それが報われたときには「幸せ」を感じる。それを、深く実感した経験でした。

 そして、このような経験を重ねながら考えました。
 この「幸せ」とは何だろう、と。
 僕の結論はこうです。人は誰でも、誰かに認められたいと願っている。だから、仕事を通じて世の中の人々に喜んでもらったときに、自分の存在価値を認められたと感じる。それが「幸せ」なのです。そして、その「幸せ」のためならば、身を削る努力ができる。それが、プロフェショナルだと思うのです。