『ダイヤモンド・オンライン』というメディアはなかなか有益な記事が多いので、僕もわりとマメにチェックしているのだが、最近かなり気になった記事がある。ノンフィクション・ライターの降旗学氏による連載『新聞・週刊誌「三面記事」を読み解く』の2015年6月6日付けの記事(「ペットボトルのキャップをワクチンに」の活動は詐欺だったのか?」)である。
タイトルだけ見れば「寄付金詐欺の話か?」と思わせるこの記事。僕のように社会貢献フィールドで活動している人間にとっては、見過ごせる話ではない。なにしろ、NPOとかCSRとか寄付とかボランティアとかの慈善業界に対しては、いまだに世間の誤解や偏見が溢れていて、そうした誤解や偏見をひとつひとつ丁寧に取り除いたり、正確な情報を伝えたりする啓発活動も僕らの重要な仕事だからだ。なので、寄付金詐欺が起きたりすると、かなりダメージが大きい。そんな事件が起きるとすぐに「だからNPOは」という話になってしまうので困ったものである。
そんなわけで、早速僕もこの記事を読んでみたのだが、NPO業界のことをほとんどわかっていない一般の読者が読むと、大きな誤解を与えてしまいかねない箇所が何カ所かあった。一応、念のために断っておくが、僕は筆者である降旗氏に対して、NPO業界に偏見や無理解があるといった批判をしたいのではない。そうではなくて、僕は一般の読者に対し、もう少しNPO業界のことを知ってほしい、と思っているだけだ。というわけで今回は、この記事をベースにNPO業界の事情について書いてみたい。
寄付金をめぐる
NPO同士のトラブル
まず、事件の詳細については上記記事に書いてあるので、できればそちらを読んでほしいのだが、簡単に説明するとこうだ。
今回槍玉に挙げられたのは、「エコキャップ推進協会」という団体。全国から善意で寄せられたペットボトルのキャップを回収し、そのリサイクル売上金で途上国の子どもたちにワクチンを贈る活動をしているNPOである。ただし当協会は、直接現地にワクチンを贈っているわけではなく、「世界の子どもにワクチンを日本委員会(JCV)」という別のNPOに寄付する形を取ってきた。しかしここ2年間、約9100万円の売上金があったにもかかわらず、なぜかJCVに対して1円も寄付をしておらず、両団体の間でトラブルになっているというのだ。
この話だけを聞くと、たしかに「寄付金詐欺だ」と言われても仕方がない気もするが、当協会側にも言い分があるという。まず、スタッフの待遇改善。たとえば、30代の男性スタッフの給料は交通費込みで約14万円とほとんどブラック企業並み。そこで労働条件を良くすべく、13名の人件費に約3900万円、事務所家賃などの管理費に約3200万円を拠出。さらに、オペレーションを委託していた業者が破綻し、その損失補填で約2000万円の臨時経費もかかったという。合計すると9100万円。つまり、これら経費によって、JCVへ寄付するお金がなくなってしまったということだ。
この話を聞くと、読者のなかには「なんだ、自分たちの活動費に使っていたのか。やっぱり寄付金詐欺だ」と思う人もいるかもしれない。しかし、そうではない。