DIAMOND CFO FORUM

平時は経営への監督と助言
非常時にはトップの首も切る

トップ後継候補の
人となりを知らせて
後任人事を討議

 すでに触れたように社外取締役には、経営をチェックする役割が求められる。日本企業においてはそれに加えて、アドバイスを期待される場合も多い。すでに社外取締役を選任、活用している企業、社外取締役の具体例を見てみよう。

 良品計画は、松井忠三会長が社長に就任後の02年から社外取締役を選任している。選任間もない02年、経営危機に陥っていた西友から同社は第三者割当増資の要請を受けた。その討議をする取締役会で、当時の社外取締役が要請受諾に反対する意見を述べた。取締役会の多数意見ではなかったが、松井氏は、その意見に従って第三者割当増資の要請を断った。

 同社は13年に埼玉県鳩山町に土地を購入し、倉庫を新設した。当初は、リースで手当てする予定だった。しかし当時、社外取締役であったしまむらの藤原秀次郎社長は、土地を購入した方がコストは安いと主張した。その意見に従ったことで、リースで倉庫を建設する場合より、20年間で100億円前後のコスト削減をすることができた。

 また、三菱商事などで社外取締役を務める伊藤邦雄・一橋大学特任教授は「資産査定以外のデータを追加で要求し、結果としてM&A(企業の合併・買収)を止めたことがある」と話す。

 業績不振が続くなどの非常時においては、トップの交代を主導することもある。これこそが、経営に対する究極のチェックといえる。

 13年に、資生堂の社長であった末川久幸氏は、体調不良を理由に辞任したが、当時、同社は3期連続で業績の下方修正をしていた上に、100%を超える配当性向を続けていた。こうした異常事態において、社外取締役がリードする形でその前の社長である前田新造氏の復帰を同社の指名諮問委員会は決めた。同社の社外取締役で指名諮問委員を務めている上村達男・早稲田大学教授は「100%を超える配当性向など異常な状態の原因をつくった前田氏に復帰してもらい、処理してもらうのが妥当と判断した」と話す。

社外取締役である大田弘子・政策研究大学院大学教授が、みずほフィナンシャルグループの取締役会議長を務める。Photo:JIJI/写真提供:政策研究大学院大学

 昨年、不祥事を機に指名委員会等設置会社へと移行したみずほフィナンシャルグループの大田弘子・取締役会議長(政策研究大学院大学教授)は「平時であれば取締役選任案の提示をCEO(最高経営責任者)に求めるが、非常時においては案の提示を求めずに選任案の決定をすることができる」と語る。つまり、トップの首を切ることができる。また、アスクルの岩田彰一郎社長は、毎年1回必ず社外取締役に、自らの続投が妥当かどうかを問うている。

 社外取締役がトップの人事を判断できるのかといぶかしがる向きもあるだろう。社内事情に精通していない社外取締役を機能させるためには、企業側の配慮やサポートが欠かせない。

 オムロンは、社外取締役も入った社長指名諮問委員会に従って、11年に作田久男前社長の後任として山田義仁現社長が就任した。社外取締役とともに、指名諮問委員長を務める冨山和彦・経営競争基盤代表取締役CEOは、社長交代のかなり前から作田氏から後継候補者をほのめかされていた。取締役会での報告者として、または非公式な取締役との会合の場への出席者として候補者とたびたびコミュニケーションを図る場を設定されていた。このようにビジネス遂行能力、人となりを社外取締役に知ってもらった上で、社長の後継者について討議したのである。

 社外の視点を入れた人事評価について、川本裕子・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授は「内部の評価では、調整する能力が重視されるが、現実に必要なのは外部に通じる言葉で外部と交渉できる能力だ。社外取締役とのやりとりでその評価ができる」とその効用を強調する。

 トップの後継指名に絡む件だけでなく、日常の取締役会運営において社外取締役への詳細な情報提供は必須である。

 今年6月の総会後の指名委員会等設置会社への移行を表明した荏原。社外取締役に対しては取締役会の4~5営業日前には、取締役会で取り上げる議案について資料を送付している。そして、直接説明にも行く。社外取締役選任後、資料の作成も変わった。社内だけでしか通用しない子会社の略称に対して対照表を付けるようになり、長い資料の場合は要約を付けるようになった。

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