資源・エネルギー、農産物価格の高騰が止まらない。原油、ガソリンは言うまでもないが、大手高炉の原材料である鉄鉱石が前年比で+65%、原料炭が3倍という上げ幅には唖然としてしまう。また、バイオエタノールの原料たるトウモロコシも、2005年安値比で3倍強であり、人間や家畜の口に入る前に、エタノール工場がすべてをのみ込む勢いである。
株式投資の観点からは、資源高がBRICsのインフレリスクを昂進させている点に要注意だ。年初来の株価パフォーマンスを見ると、躍進するBRICsの象徴であった中国上海総合指数▲41.1%、インドSENSEX指数▲18.7%と低迷している。
中長期的な観点では、中国、インドの成長性を疑う者はいない。おそらく、21世紀のアジアを牽引するのは両国であろう。しかし、両国の株価下落要因で注意を要するのは、共にインフレリスクが高まり、金融引き締め策を採らざるをえない状況にある点だ。
中国の3月のCPI(消費者物価指数・前年同月比)は+8.3%。昨年1月には+2.2%であったことを見ても、上昇ピッチは激しい。インフレを抑制し、景気の過熱を防ぐことが中長期的な発展につながることを、中国政府、人民銀行首脳も十分理解しており、連続的な利上げ、預金準備率の引き上げを実施している。
一方、インドも3月29日時点で卸売物価指数が+7.4%まで高騰した。昨年10月時点が+3.1%であったことを考えても、これまた上昇が著しい。
インドは広大な国土の中でまともな油田がなく、原油は輸入に依存している。今年2月時点では、全輸入に占める原油の割合は33.9%に達しており、原油が上昇すれば物価高騰の圧力を受けやすい。当然、物価抑制のためには金融引き締め策となるわけで、預金準備率を4月26日に0.25%、5月10日にも0.25%引き上げて8%にすることを発表した。
もっと極端な例を出せば、経済躍進で投資家の関心が高かったベトナムは、3月の消費者物価が+19.4%に達しており、VN株価指数は年初来で▲42.0%の暴落を記録している(下落率はいずれも4月18日時点)。
米国においても、サンフランシスコ連銀のイエレン総裁、ダラス連銀のフィッシャー総裁は、インフレ警戒感を前面に出している。サブプライム問題以外に、世界は「景気減速下のインフレ昂進」を背負い込んでいることに、注意が必要と思われる。
(三菱UFJ証券シニア投資ストラテジスト 藤戸則弘)