こうしたインセンティブを付与する一方で、「日本再興戦略 改訂2014」に従って、取引所は上場企業に対し、「会計基準の選択に関する基本的な考え方」を、決算短信などで投資家に開示するよう要請しています。これは、経営者の皆さんに会計基準の選択について考える機会を提供することにつながると思います。JPXは、一貫してIFRS適用を奨励しています。
日本企業が任意で
IFRSを採用するメリットとは?
――日本企業がIFRSを適用する理由はどこにあるのでしょうか。
金融庁は、IFRS適用企業にヒアリングした結果を本年4月に「IFRS適用レポート」にまとめています。それによると、採用理由で最も多いのは、経営管理の強化です。日本を代表するようなグローバル企業は海外に多くの子会社を持っていますが、各国で会計基準がバラバラだと、会計処理が煩雑というだけでなく、各子会社の業績を正確に評価することが難しくなります。そこで、IFRSという共通の物差しを導入すれば、グローバルにガバナンスを強化することができ、迅速な経営判断にも寄与することになります。
第二のメリットは、ライバル企業との比較可能性の向上です。グローバルに展開している日本企業は、同業の日本企業とだけ業績を比較するのでは不十分です。外国の同業企業や関連産業との業績比較が求められます。それには、同じ会計基準の目線で比較できることが重要になります。特に、M&Aのような高度な経営判断を行う際には、共通の会計基準で業績や企業価値を評価することが大切です。