後者には儀礼(挨拶など)、共通のヒーロー(実在の人物だけでなくテレビ番組の主人公の類も含む広い意味でのヒーロー)、シンボル(言葉やしぐさなど)がある。組織の文化は慣習によって識別することができ、国民文化は価値観によって区別することができる。

 価値観は子供たちが真っ先に学ぶ事柄の1つである。これらは学校や職場などの地域環境によってさらに強化される。したがって、大人になってからこれらの価値観を変えることは難しく、それゆえ外国人従業員は別の国民文化に直面したとき困難を経験することが多い。

●国民文化の次元
 ホフステードは価値観調査質問集と呼ばれるアンケートを用いて研究を進めた。その結果から、国民文化の特徴を形成する指標を考案した(本項で紹介する質問はすべてホフステードの1991年の著書『多文化世界』からの引用である)。

●権力の格差:社会的不平等への対応の仕方
 ホフステードは権力の格差を「それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が不平等に分布している状態を予期し、受け入れている程度」と定義している。

 イギリスのような権力格差の小さい国では、人々のあいだの不平等は最小限度に抑えられる傾向にあり、権限分散の傾向が強く、部下は上司が意思決定を行なう前に相談されることを期待し、特権やステータスシンボルといったものはあまり見受けられない。これに対し権力格差の大きい国では、人々のあいだに不平等があることは望ましいと考えられており、権力弱者が支配者に依存する傾向が強く、権力集中はむしろ当たり前のことで、給料や特権やステータスシンボルの面で部下と上司は大きな隔たりがある。

●個人主義対集団主義:集団に対してのふるまい
 「個人主義を特徴とする社会では、個人と個人の結びつきはゆるやかである。人はそれぞれ、自分自身と肉親の面倒を見ればよい。その対極の集団主義を特徴とする社会では、人は生まれたときから、メンバー同士の結びつきの強い内集団に統合され、無条件の忠誠を誓うかぎり、人はその集団から生涯にわたって保護される」