『東京が壊滅する日』誕生秘話

坪井今回の本では、原子爆弾(原爆)からクリーンエネルギーとして美化された原子力発電(原発)へと「双子の悪魔」のラインが描かれています。
 私が20代のころに読んだ広瀬さんの『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』(文春文庫、元本は1982年)では、原爆と原子力発電の関係を初めて教えられました。

広瀬 いままで私の本を読んでくださった方に加え、20代、30代、40代の働きざかりの人たち、とくにいままで私の本を読んだことがない人が読まないと時代が変わらないので、その人たちにどうしても読んでほしいという想いで書きました。
 原発問題に反対している人でも「ただ反対」と言っているだけでは、状況はまったく変わりません。51の系図・図版と写真のリストを軸とした史実とデータに基づく本書を思考のスタートラインにして、たくさん議論していただきたい。そして、議論に終わらせずに、ぜひ現実を変える行動に出ていただきたい。

坪井 どういうふうに本書をつくっていったのですか。

広瀬 2014年11月末に『文明開化は長崎から(上)(下)』(集英社)という本を書いたのですが、その日本史が面白かったので、何度も読んでから書棚に戻そうとしたときに目に入ったのが、『赤い楯――ロスチャイルドの謎』(集英社、1991年)でした。
 私は書いた本は読み返さない習慣だったので、いままでそんなことをしたことがないのですが、そのとき、『赤い楯』の菊判上下巻を一気に読んでみた。そして内容に驚いて、次から次へその他の自著も最後まで読み返してみたのですね。そうしたら、どれも面白かった。
 同時に「自分自身がすごく大切なことを忘れていた」と思ったのです。
 著者である私自身がそうなら、反原発運動に関わる人やマスコミの人だけでなく、一般の読者の方々はこういう史実やデータはまったく知らないだろう。それを今回のフクシマ原発事故を縦軸に描くことによって、思考の原点に戻る必要がある、と思って一気に書き下ろしたのが本書なのです。