ペットが家族の一員として、大切に育てられるようになった現代。買い主の愛情に呼応して、ペットの寿命は人間同様に伸び、高齢化も進んでいる。その背景には、食事、医療、運動など、様々な要因があり、人間並みの商品・サービスも目白押しだ。そんな、ペットの健康事情の実態と背景をレポートする。
犬は14.17歳、猫は14.82歳
平均寿命が延びた最大の理由は?
筆者が幼少期を過ごした昭和40年代の田舎町で、犬といえば重たい鎖に繋がれ、庭の片隅で来訪者を威嚇する「番犬」であった。室内犬は「座敷犬」などと呼ばれ、お金持ちの象徴として犬とは違う生き物として存在していた。
猫は、飼い猫というよりあたりを彷徨う野生動物。時々天井裏に放り込まれ、ネズミ退治を用命されるなど、現代との立場の違いに愕然とさせられる。
さて、そんな犬猫は現在どのくらいいるのだろうか。一般社団法人ペットフード協会の資料によると、平成26年犬の飼育頭数は1034万6000頭、飼育世帯は15.06%にのぼる。猫は同年995万9000頭、飼育世帯は10.13%。平均寿命は犬14.17歳、猫14.82歳だという。
同協会の会長である石山恒氏によると「昭和58年の独自調査では、犬の平均寿命は7.5歳」というから、ここ30年で倍近い延びをみせていることがわかる。その背景として、まず食事があげられよう。
冒頭に紹介した番犬の時代。与えられた餌は、家族の食事の残り物であった。人間の食べ物では、味が濃過ぎる上、栄養バランスも悪いのが当然。ドックフードやキャットフードなど、犬や猫にとっての栄養バランスを考慮した専用フードは、いつ頃普及したのだろう。
「昭和62年の時点でドックフードの定着率は20.9%、キャットフードが32.6%。以降、急激に普及して現代では双方とも90%を超えています」(石山氏)
専用フードの普及が、犬猫の平均寿命の伸長に与えた影響は大きいといえる。
次に医療の充実。農林水産省の資料によると、動物病院の数は平成25年で1万1032施設。平成16年時は、9245施設だったので近年急速に増えていることがわかる。感染症予防は万全、健康診断もあたり前。血液検査、尿検査、糞便検査、レントゲン、超音波など、検査項目も人間並みである。
動物病院の増加と共にペット保険の登場も犬猫の健康増進に大きく貢献したといえるだろう。ちょっとでも気になることがあるとすぐに病院。今や待合室はさながら人間の病院並みの混雑ぶりである。