道路脇に止められた1台のトラック。喪服の女性が荷台に花を捧げ、手を合わせている。執り行なわれているのは“ペットのお葬式”。「移動火葬」と呼ばれ、死骸は備え付けの焼却炉で火葬される。最近、死んだペットを人間と同じように弔う人が増えているのだ。
犬猫合わせて2200万匹のペット大国となった日本。しかしいま、その墓や葬儀をめぐってトラブルが相次いでいる。
火葬すると偽り、死骸を山林に廃棄。
横行する悪質なペット葬祭業者
今年3月、取材班の元に届いた1通のメール。そこには凄惨な写真が添付されていた。袋に入れられ、無造作に投げ捨てられた犬の死骸。誰がなぜこんな酷いことをしたのか。
埼玉県飯能市。写真が撮られた現場は人里離れた山林だった。第一発見者は地元の猟友会の男性。山に入ると、斜面一面に犬の死骸が入ったポリ袋が散乱していたという。動物愛護団体と共に現場を調査すると、死骸の多くが洋服を着ていたり、千羽鶴が添えられていたりと、火葬に付される前の状態であることが判明した。
4月、ペットの葬祭業を営む男が詐欺などの疑いで逮捕された。ペットの死骸を火葬するといって飼い主から料金を取り、実際には捨てていたのだ。犯行は10年近く続いていたとみられている。6月16日に行なわれた初公判。検察側の冒頭陳述によれば、男は同業者との価格競争が激しさを増す中、コストを抑えるために死骸を捨てたという。
一体どんな手口だったのか。被害者の1人、笹木恭子さんを訪ねた。笹木さんの愛犬が死んだのは去年12月。思い出を手元に置いておきたいと2万円で火葬を頼むことにした。当日、男は一人、ワゴン車に乗って現れた。トランクに用意されていたのは祭壇と棺。悲しみに暮れる笹木さんを前に、男はカセットテープでお経を流しながら別れの言葉を述べ始めたという。
「もっと一緒にいてあげればよかった、可愛がってあげればよかった・・・と涙をそそるような言葉を並べ立てるので涙が止まらなかった。信じ切っていた」
と笹木さんは悔しさを滲ませる。
事件の発覚後、笹木さんは不安を感じ、火葬後に送られてきた骨壺の中身を獣医に見てもらった。その結果、騙されていたと判る。骨の中に、歯の欠片が混ざっていたのだ。笹木さんの愛犬は年老いていたため歯がなく、歯茎で餌を食べていた。それにも関わらず、尖った歯が沢山入っていたのだった。