4月1日、「改正土壌汚染対策法」が施行された。健康被害の防止を目的に環境省の肝煎りで成立した法律だ。だがその影響は、本来法律が視野に入れていなかった不動産業界や土地持ち企業の経営にまで飛び火しそうである。
この法律は土地の所有者が3000平方メートル以上の土地の改変、つまり開発行為を行う際に、都道府県へのその行為の届け出を義務づけるものだ。都道府県は届け出を受けて、汚染の疑いがある場合、調査および結果の報告を命令できる。さらに国土交通省は、こうして各自治体に集まった汚染情報をデータベース化する。今年中をメドにインターネット上で一般公開する計画だ。
全国に潜在的な汚染土壌は30万~45万ヵ所あると見られている。だが、条例で調査を義務づけた東京都などの例外を除いては、土壌汚染を調査する義務は所有者にも開発者にもなく、実態はよくわからなかった。だが今後はそれが全国的に明らかになる。
すでに業界ではちょっとした騒ぎが起こっている。改正法の施行をにらみ、このところ土壌調査会社には「まとまった土地を保有する企業から、数ヵ月先まで対応し切れないほどの件数の調査依頼が殺到している」(業界関係者)のだ。不動産会社が開発用として保有する土地の“身体検査”をあわてて行うケースや、土地を担保に銀行から融資を受ける中小企業が、銀行からの要請で調査を行うケースが多いという。そもそも、中心市街地の再開発地域は元工業地帯も多く、調査でなんらかの汚染物質が出る可能性も大きい。調査が実質的に義務化されれば、不動産開発の中止や融資担保の目減りなどが続出する可能性もある。
ことさら注目される“環境対応”が「せっかく回復しかけた土地流通市場に冷や水を浴びせるのでは」(不動産会社幹部)と土地持ち企業は戦々恐々だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)