最大の利点は、太陽光や風力のように発電量がブレないこと。たとえば太陽光なら雨の日や曇りの日は利用できないので、発電施設の設備利用率は日本の場合、年間で12~13%程度に留まる。それに対して専ら水量が安定した農業用水路を使う小水力発電なら、設備利用率は8割近くにもなるという。また、場所をとらないメリットも大きい。「たとえば、1400kW程度の太陽光をつくろうとしたら2ha(2万平米)ほどの土地が必要となるが、小水力発電なら、ケースによって会社の会議室の1.5倍程度のスペースでそれが可能になる」(大西氏)。電力事業者にとって、水力は魅力的な安定電源なのである。

小水力との「出会い」は偶然?
丸紅が手に入れた最強の相棒・三峰川電力

 では、同社はどんなきっかけで小水力発電に参入し、これまでどのようにビジネスを育ててきたのか。その経緯を振り返ろう。

 大西氏によると、「始めから小水力をやろうと思っていたわけではなかった」という。丸紅は2000年7月に電力小売りへ参入したものの、当初は供給できる電力がなく、独自の発電所を持たなくてはいけなかった。そんな折、関係者が営業活動の中で出会ったのが、長野県伊那市で水力発電を手がける三峰川電力株式会社だった。1960年の設立当初から「流れ込み式」というダムを持たず環境に与える負荷が少ない方式で水力発電を行ってきた同社のノウハウは、今の小水力発電の原型と言えるものだった。その技術力に着目した丸紅は、親会社の昭和電工から同年8月に株式譲渡を受けて三峰川電力を完全子会社化。以後、水力発電の全てを同社と二人三脚で行うことになる。

 当時、三峰川電力が伊那市に持っていた「三峰川第一発電所」「三峰川第二発電所」においては、南アルプス仙丈ヶ岳を源とする三峰川の本流と、その支流12ヵ所の取水所より水を取り入れ、隧道で水槽に導き、第一発電所では約260m、第二発電所では約330mの落差のある地形から水槽に貯められた水を水圧鉄管で落下させることによって、総出力3万2800kWの発電を行っていた。川の上流に位置する第二発電所で発電に使った水を、下流に位置する第一発電所の発電にも回す、という手法だ。

 丸紅にはノウハウがなかったため、当初1~2年間は三峰川電力から専門技術を持つ人員を受け入れ、人によっては丸紅に転籍してもらって、この2つの発電所の運営によって得た電気を販売していた。だが、「既存の発電所の運営をしているだけでは発展はない。新しいビジネスを始める必要性を感じた」(大西氏)。そこで、三峰川電力の得意とするノウハウを応用して考案したのが、小水力発電だったのである。

 環境的な追い風もあった。丸紅が水力発電に参入した2000年当時、再生可能エネルギーの事業化には制度的補償も少なく、採算度外視を覚悟したチャレンジをせざるを得なかった。そのため、小水力発電の構想は以前からあったものの、なかなか実現できずにいた。