「地域部門トップを任せられるような人材を獲得できるかどうかが決め手だ」(大和証券グループ本社首脳)──。
昨年11月にアジアへの経営資源シフトを決断して以来、現地人材の採用活動を続けてきた大和が、早くもアジアにおける人材獲得で成果を出し始めている。
4月1日、アジア株の機関投資家向けセールス部門のトップに、元ドイツ銀行のエスター・リー氏が就任。同氏は19年以上、一貫して香港金融界で活躍してきた人物で、ドイツ銀行のブローカレッジ(委託売買)シェアを、17位から3位にまで引き上げた実績を持つ。
競合他社からも多く誘いを受けていたリー氏が大和を選んだのは、「大和の本気度にコミットしたくなったから」(関係者)。
大和の売買シェアは現在10位台。これを今後2年でトップ5に引き上げる目標を掲げている。今回の同氏の獲得で、目標達成に向けて一歩前進したといえる。
さらに、同じくドイツ銀行で日本株を除くアジア株セールス部門のトップを務めるラビ・ナレーン氏も、近々大和に移籍する模様。
そのほか大和はすでに、株式デリバティブのセールス部門のトップに就ける人材や、同等のクラスの人材を5人ほど獲得した模様だ。
もっとも、ブローカレッジ業務ばかりでアジアビジネスが拡大するわけではない。というのも顧客である機関投資家は、現地企業に関する情報提供力を重視するため、大和は現地企業の株式・債券の引き受けなどの投資銀行部門も強化することが不可欠だからだ。
国内市場が低迷するなか、アジアの成長に生き残る道を見出した大和がクリアすべき次なる課題はここにある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)