50年先を見据えて、経営ビジョンを考える――。日本企業の長期的な考え方は、3ヵ月単位で売上高をチェックするウォールストリートの投資家には理解しづらいものらしい。エイミー・エドモンドソン教授がハーバードのエグゼクティブ講座で教えているのは、環境保全と利益を両立させようと苦悩する日本企業「リコー」の事例だ。近年、注目されている環境経営だが、日本企業をモデルにして長期ビジョンを掲げるヨーロッパ企業も出てきた。日本はこの分野で世界に大きな貢献ができる、というエドモンドソン教授に、その理由を聞いてみた。(聞き手/佐藤智恵 インタビューは2015年6月24日)
2050年の目標を立てる
リコーにみる日本企業らしい経営戦略
Amy Edmondson
ハーバードビジネススクール教授。専門はリーダーシップと経営管理。同校のMBAプログラム及びエグゼクティブプログラムにてリーダーシップ、チームワーク、イノベーションなどを教えている。2013年、Thinkers50「世界で最も影響力のあるビジネス思想家50人」で第15位にランクインした。多数の受賞歴があり2006年にはカミングス賞(米国経営学会)、2004年にはアクセンチュア賞を受賞。世界各国で講演やコンサルティングも行っている。近著に『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)。2016年には最新刊“Building the Future”(Berrett-Koehler, 2016)を出版予定。
佐藤 エドモンドソン教授は2010年、リコーについてのケース教材を執筆されています。
ケースでは、地球環境に貢献することを最優先に考えるリコーが、経済性を最優先する投資家の理解が得られず、苦悩する様子が描かれています。リコーについて研究しようと思ったのはなぜですか。
エドモンドソン もともとサステイナビリティ(持続可能性)の向上に取り組む企業に興味があったからです。
効率性、品質、そして持続可能性。どれも企業にとっては不可欠なものですが、持続可能性の分野は多くの企業にとって未知の分野。組織学習の途上と言えます。
リコーはいち早く環境経営を取り入れた会社であり、どのように環境保全と事業成長を両立していくのか大変興味を持ちました。