21世紀の産官学のあり方として、「官」は、「学」と「産」が英知を存分に振るい、人材、お金、場所などの社会的リソースを集められるようにお膳立てをすることに、まず注力していくことが賢明です。法律や規制の見直しの必要もあれば、公共性とのバランスを取りながら、できる限り民間の要望に応えていく。国の打ち手が制約されていく中で、この未来社会プロジェクトを通じて、産官学の役割を再編集し、新たなソーシャルプロデュース、社会創発のモデルが構築されていく契機にしたいとも考えています。

毛利衛さんが期待するメッセージ
「思いやりを土壌にしたロボット社会」

 ロボットによるユニバーサルな社会が実現していく上で、私たちが価値観を時代の変化と共にどう再構築すべきなのかを問われていくのは、間違いありません。このコラムで何度も書いてまいりましたが、2040年代にもAIが人間の知力を上回るシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えようと言われる時代、知識の暗記を奨励するマークシート型教育から、知識を運用して自分の頭で考える教育に切り替えていくのも、価値観の転換の1つです。

 今回のプロジェクトでも、たとえば従来型の展示品なら「壊れるので触らないでください」と注意していたのを、「ご自由に触ってください。ただし、もしも壊したら、ちゃんと自分で直していってください」というように、変えてみたいと思います。工業化社会の展示品は、修理する部品を外部から取り寄せるのに時間がかかりましたが、前述の田中教授が専門とする3Dプリンタによるものづくりでは、その場で復元することができるからです。

 一方で、シンギュラリティの問題で問いかけられる重要なアジェンダとして、「人間の仕事が機械によって次々と置き換えられて失業する」といった悲観的なストーリーが挙げられます。しかし、ユニバーサル社会での主役はあくまで人間。技術と人の関係は単なる置き換えではなく、AIがどう人間をアシストするのか、つまり「人間の可能性をどう拡張していくのか」を目指しています。

 第1回の協議会で、顧問を務める毛利さんが「人間社会の将来、たとえば人工知能がどうなるか心配されているが、日本ではロボットと人間社会とが対立せず、取り込んでいくようなことが示せるのではないか」と語られました。その見立てというのは、オリンピック招致の際のキーワードになった「おもてなし」の精神に見られるように、日本人は「思いやり」の精神を外の人に対して持つことができていることに立脚しているようです。

 毛利さんから私たち協議会に対しては、「(思いやりを土壌にした)ロボット社会を築くとことが、メッセージとして世界に広がっていくことを期待しております」と激励されました。プロジェクトでは、単なるイノベーションの奨励にとどまらず、人間と人間、日本人と外国人、健常者と障がい者、そして人間とロボット(場合によればペットも)が手を取り合う社会のあり方という哲学を、日本から提案していきたいと思います。ぜひこのコンセプトにご賛同・ご協力いただければ幸いです。