「TPPは昨今のアジア太平洋地域における重要な自由貿易協定の1つであり、中国はTPPが同地域における、他の自由貿易協定と相互に促進的な関係を形成し、共にアジア太平洋地域の貿易投資と経済発展に貢献していくことを希望する」

 この幹部は続ける。

「中国政府として、TPP交渉が米国主導の下で本格的に開始された当初は、相当警戒していたが、徐々にシフトし、現在の立場に至っている。自らが設定したルールのなかで中国の存在や行動を“規制”することが米国の目的だとすれば、中国が加入しないTPPが不完全であることは明らかだ。米国がTPPという枠組みをめぐって中国を排除することはない。巻き込むことこそが目的だ」

今後TPPに中国が加入する
可能性はあるのだろうか?

 私は、最も聞き出したかった質問を口にした。

「そんなTPPに、時期やタイミングは別にして、中国は加入するのですか?」

 比較的長い付き合いであり、信頼関係もあるこの人物からなら、ホンネが聞けると思っていた私に、先方は言葉を選ぶように返答してきた。

「TPPそのものの展望、中国の改革開放双方に変数がある。情勢を見極めながら、そのときのベストな判断をしていくだけだ。ただ、中国としては、TPPはWTOや他の自由貿易協定と相互補完的な関係にあるものだと考えている。従って、開放的な態度を保持していると言っている」

 将来的に加入するか否かに関しては明言しなかったが、はぐらかされたというよりは、中国政府内でも本当に決まっていないのだと私は考えている。大きな方向性とスタンスは設定・堅持・公表しつつも、状況や情勢の変化に応じて柔軟な意思決定ができるように、進路・退路を含めた選択の幅を残しておく。内政・外交を問わず、中国の政策立案・決定・執行プロセスにしばしば見られる現象であるように思う。

 現在に至るまで、中国共産党指導部から漏れてくるTPPへの現状認識と立場表明として、最も権威のある公言は、10月8日、高虎城・商務相が北京の主流メディアからのインタビューで答えた内容であろう。前出の報道官の主張を踏襲しつつ、より具体的な発言をしている。3つのセンテンスを抽出してみたい。

「米政府やTPP参加国はTPPが中国を封じ込めたり、排斥するものではないと表明してきた。実際に、中米など21のアジア太平洋経済協力会議(APEC)参加国は昨年北京で開かれた会議において、APECがアジア太平洋で自由貿易区の実現を促進するためのロードマップを採択している。中国は米国と手を携え、マルチ貿易体制の枠組みで、世界貿易ルールの制定を巡って協力を強化したいと思っている」