4月16日、米証券取引委員会(SEC)が米投資銀行大手ゴールドマン・サックスに対して起こした訴訟が、金融界に波紋を呼んでいる。
SECが提出した訴状によれば、ゴールドマンが2007年に販売したサブプライムローン関連の金融商品について、投資家に対して事前の情報開示を怠ったことが証券法などに違反すると指摘した。
ところがゴールドマンは、SECの指摘する違法性を真っ向から否定。というのも、販売した相手は個人投資家ではなくプロの機関投資家であり、プロ同士では「通常は開示しない情報だった」(米金融筋)からだ。
SECが提訴に踏み切った背景には、金融危機の原因であったはずの金融界がすでに、実体経済の悪化を尻目に収益を回復させていることがある。にもかかわらず、現SEC委員長は、他の事件における捜査の失敗が今回の一件と同時に明らかになるなど、就任から1年以上たっても「危機に絡み、目立つ摘発実績を出せていなかった」(関雄太・野村資本市場研究所ニューヨーク駐在員事務所長)。
そもそも今回の事案は、SECの規制対象のど真ん中ともいえる市場操作やインサイダー取引に関するものでもない。そのため、なんとしても危機絡みで告発したかっただけとの見方が金融界ではもっぱらなわけだ。
奇しくも現在、米上院に提出されている金融規制改革法案には、SECの摘発強化を意図した内容が含まれる。ゴールドマン訴訟の行方次第では、同様のビジネスを特に大きく展開してきたメリルリンチ、シティグループ、UBSなども今後、摘発される可能性が残る。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)