後日分かったのは……妻は哲人さんと知り合う前に彼と付き合っていたのですが、この時点で彼は既婚者だったこと、そして妻が哲人さんと付き合い始め、妊娠が分かったとき、哲人さんではなく彼と結婚するという選択肢もあったのですが「彼が既婚者だったので」結婚できなかったこと、そして妻が哲人さんに他人の子を育てさせたのは、あくまで彼と再婚するまでの「つなぎ」だったこと。つまり、哲人さんの存在はしょせん「一時的な代用品」に過ぎなかったのです。

 ところで哲人さんのような悲劇は最近、増えているのでしょうか。法務省の司法統計によると、親子関係不存在確認の申立件数は平成17年が2323件、平成24年が1365件なので、7年間で約41%も減っているようです。もちろん、哲人さんのような「できちゃった婚」だけでなく、離婚協議中に妻が不倫・妊娠し、離婚後300日も経たずに出産したケース(いわゆる300日問題)もこの数字のなかに含まれています。

 一方で不倫妻の数はどうでしょうか?さすがの法務省も「不倫妻の数」を調べていませんが、そうそう劇的に増えたり、減ったりはしないでしょうから、増減は誤差の範囲で、ほとんど横ばいでしょう。

自分の子ではないのに育てている父親が増加
離婚後も勘違いし養育費を支払うケースも?

 このように親子関係不存在の数と不倫妻の数を見比べると何が、分かるでしょうか?そう、「自分の子ではないのに育てている父親」が増えていることです。基本的に円満な家庭で仲睦まじく暮らしている夫婦にとって「実の子かどうか」を疑うような場面はほとんどありません。多少なりとも疑いを持ったとしても、DNA鑑定をしよう、家庭裁判所へ申し立てよう、戸籍を修正しようとは思わないでしょう(もちろん、平和な家庭でも「自分の子ではない」ケースは内在しているかもしれませんが)。

 逆にいえば白黒をつけるのは夫婦が離婚する場合のみです。哲人さんのように親子関係に疑問を持ち、DNA鑑定を行い、親子関係不存在確認の手続を踏み、戸籍を正しく直そうとすれば良いのですが、実際のところ、前述の統計によると何もせず離婚する夫も増えているでしょうから、離婚後、「自分の子」だと勘違いして、他人の子に毎月せっせと養育費を支払っていても不思議ではないのです。

 いずれにしても哲人さんと同じ悲劇が起こらないようにするには出産の段階でDNA鑑定を行っておくのが賢明で、そうすれば哲人さんのように「育ての親としての責任」に苛まれることもありません。何より中途半端なタイミングで父親をチェンジするのは、子どもにとって二次被害以外の何ものでもありません。「育ての親と実の親の相違」を起こさないことが、何よりも大事です。

<出典>
・法務省の司法統計(平成17年)
http://www.stat.go.jp/data/nenkan/back63/zuhyou/y2517000.xls

・法務省の司法統計(平成24年)
http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y2517000.xls