「史上最速」の会社に学ぶ、速さの秘密。
今回のキーワードは「デッドライン」です。「そんなのあたりまえだろう」と思われる方も多いかもしれませんが、日々の仕事をデッドラインを意識しながらできている人はごく少数です。
ぜひこの機会に時間の考え方に変革を起こしてください。
時間は未来からやってくる
時間というのはビッグバンで宇宙がはじまってから、未来に向かって流れている。それが「常識」です。よって、過去の結果が現在に、現在の結果が未来に関係しているのだと、普通は思われるでしょう。
しかし仏教の中には、時間は「過去から未来に」流れるのではなく、「未来から」流れてくるもの、という考え方があるそうです。「今」の現実をつくっている原因は「過去」ではなく「未来」にある、というのです。
私たちは時間という川の流れを船に乗って遡っていて、上流から未来が来て、現在を通り過ぎて過去になるのです。
今の自分をつくっているのが過去だと考えると、「今の自分が幸せでないのは不幸な家庭環境で育ったからだ」「子どものときいじめられたからだ」と結論付けてしまいそうです。過去は変えられないので、現在も未来も変えられないと悲観的になるでしょう。
しかし、未来から流れてくるものだと考えると、未来は過去や現在とは関係ないので、すべては自分次第でどうにでもなると前向きにとらえられます。
私は仏教に詳しいわけではありませんが、「時間は未来からやってくる」という言葉をよく使います。
たとえば、川の上流で「1年後の12月に新社屋を建てる」と決めたら、それまでに一生懸命ボートで漕いでたどり着かなくてはなりません。12月の4ヵ月前には上棟式をやらなければいけない、それまでには基礎工事も完成させなければいけない、そもそも土地も買って建物のデザインも検討しなければならない、と12月からザーッと流れてくるような感じです。時間はどんどん流れていきますから、新社屋の完成に向かってスケジュールを組み立てて突き進んでいくのです。
時間が未来からやってくる感覚に慣れると、未来を決めないと今やるべきことが見えてこないようになります。
とにかく思いつくことをどんどんやっていくのではなく、未来にゴールを定めて、それに向けてやるべきことを洗い出していくという方法でないと、何をしたらいいのかがわからないのです。
もし、いまなにをすべきかがわからないのだとしたら、それは未来が見えていないなによりの証拠、ということになるでしょう。
納期までが短いと、ボートを漕ぎ続けなければ時間の流れに押し流されてしまいますが、それでもゴールが見えているのと見えていないのとでは大きく違います。ゴールが見えているからこそ、走りながら考えられるのです。
デッドラインマネジメントで人生は変わる
私は、ゴールを決めて逆算する「デッドラインマネジメント」こそ、仕事が成功するか否かのカギになると考えています。何事においても、デッドラインのないものを完成させることはできないのです。 スペインのバルセロナにあるサグラダ・ファミリア。建築家のアントニ・ガウディが手掛けた巨大教会ですが、工事を着工して130年以上過ぎた今でも未完成です。
日本でも、横浜駅は10年前から工事が始まり、今まで一度も完成したことがないので、「日本のサグラダ・ファミリア」などと言われることもあるそうで す。駅の構内や周辺で工事が絶えず行われているものの、完成形がどうなるのかは誰もわかっていないのだそうです。20年後の横浜駅の完成予想図はあっても、駅構内の個別のビルや施設の計画を約束するものではないので、本当にその通りにできるのかどうかもわからないといいます。
もちろん、これらの例はさまざまな事情もあったでしょう。それでも、やはりデッドラインがしっかり決められていないと、先延ばしになっていくものなのです。いくらでもお金や時間を費やせるものならいいですが、通常のビジネスではそれはあり得ません。
デッドラインとはその言葉通り、本来の意味は「死線」です。超えてはならない線であり、もともとは囚人がそれを越えると銃殺される境界線のことを呼んでいたといわれています。
なぜ仕事にデッドラインが必要なのか。それは人生にデッドラインがあるからにほかなりません。人生が無限なら、デッドラインなしで仕事をダラダラと続けてもいいでしょう。しかし、人生には限りがあるのです。
すべての人は何十年後には死が訪れる死刑囚でもある。多少きつい言い方ですが、そのことを私たちは忘れてはいけません。
「最速の会社」の秘密を今後どんどん公開していきます。あなたの仕事やチームの仕事をスピードアップさせるヒントにしてください。
(続きは明日、更新します)