予想は見事に裏切られた。マザーハウス代表取締役の山口絵理子は、控えめに、そして少し緊張気味に、われわれの前に姿を現した。
マザーハウスは、世界でも屈指の最貧国・バングラデシュでバッグを生産し、日本で販売している。会社を立ち上げたのは2006年3月。すでに、2008年のテレビ番組『情熱大陸』で紹介されたので、ご覧になった方も多いかも知れない。
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予断をもたないために、この番組を見ないままインタビューに臨んだのだが、バリバリの活動家を想像していたのとは、印象はまったく異なった。ぱっと見には、頼りなげですらある。その彼女がかの国でビジネスを行っているとは、にわかには信じがたい。
なにしろ、バングラデシュの1人当たりGDPは約620ドルで、日本の約60分の1にも満たない。ものの本で読む限り、その貧困ぶりや社会生活は、我々の想像をはるかに超え、我々から見ればすさまじいとさえ言える。山口と話を進めていくと、社会をよくしたいという活動家的な顔と、経営者としての顔が、バランス良く同居しているのが分かってくる。第1回目は、前者の側面にスポット当ててみる。
山口がバングラデシュに飛び込んだのは、大学4年生の時であった。
山口代表:私自身は、国際協力の中で一番興味があるのは、教育だったんですね。自分が一時期、学校に行けなかったという経験もあって、学校とか教育とかって、すごい大事だなぁって。実際、途上国って、教育の機会がすごく少ないし、本質的に教育が欠けているのは途上国じゃないかな、という気持ちがあって、大学4年生の時にアメリカの国際機関で、実際に働いてみたんです。