経済がここまでサービス化すると、技術は別に発明や特許だけではない。“仕事に慣れ親しんでいる”“○○さんはとても顔が広い”というのも重要な技術進歩なんです。経営学の研究の中では「トランザクティブ・メモリー」と言いますけれども、その蓄積が生産性に非常に利くというのが分かってきている。

 そこで、例えば女性が途切れ目なく同じ会社で継続的に働けるというのは、その企業の中で特殊なトランザクティブ・メモリーを積むということなのです。これを活かすのが「一億総活躍社会」で大切なところです。労働投入量を増やすことが、実はもっと本丸の、かつ掴みどころのない技術力の向上に利く。そうしたルートを作っていけると成功。単純に労働力を増やしただけだったら“失敗ではない”という程度、労働力自体も増えなかったら大失敗です。

小黒 先ほどの三つの要素の二番目、生産設備も結構重要です。景気が良くなれば都市部の設備は稼働するのですが、地方にある生産設備は、はっきり言って今すぐ除却した方がいいものもあるかもしれない。働く人が減っていって生産設備を使えないとすると、それをちゃんと使える場所に移す、インフラも含めて都市部などのある程度人口が維持できる所に集中投下していく、ということも必要です。

「インフラの更新が大問題に」
「地方創生は国が言うものじゃない」

──安倍政権は「地方創生」も強調していますが。

飯田 「地方創生」については、中山間地域での村おこしの話をしている人から中核市の中心市街地活性化事業の話をしている人、全国的な交通インフラの整備の話をしている人までいて、政治家や論者の中でもまったく定義が違ってしまっていることが大きな問題です。しかし、人口が減少していく中で、インフラの取捨選択というのは必ず必要になってきます。

小黒 今後、直面する大きな課題ですね。例えば高速道路や下水道など、70~80年代に整備されたインフラの更新時期がこれからやってくる。どこを更新していくのか、しっかり選別しなければいけないのですが、これは非常に政治の決定プロセスと相性が悪い。判断を誤ると社会資本の整備のためのお金を無駄に使うことになる。真剣に議論していかなければならない。ちょうどその入り口になるのも、2016年です。

飯田 人口減少はもうどうやら避けられないので、これからテーマになるのは人口移動ではないか。僕は東京一極集中は効率的ではないと思っています。例えば東京の山手線内側エリアは、平均通勤時間片道80分近いと言われる。一日に2時間半通勤に使われている。そんな中でクリエイティブな発想ができるのか。