基本ポートフォリオを検討するGPIFの運用委員会は、異様なまでに集中した世間の関心の下で、2015年の夏を中心とする時期に基本ポートフォリオの策定作業を行った。この間、政府に近いと見られる外部有識者の一部からは、日本株で20%は最低必要だろうと述べるような意見表明があり、「20%」が注目されるレベルとなった。

 仮に、運用委員会が相場に与える影響を意識したとすれば、「20%」を下回ると、市場には「失望売り」が出るのではないかという予想をした可能性が大きいし、事実上の任命者と思しき政府の希望を「忖度」すると、「20%」を下回らない数字が無難だろうと考えたのではないか。もちろん、委員会に関する情報は管理されていたので、これは、筆者の推測に過ぎない。

 さらに推測すると、政府筋では、「日銀の債券(国債買い)+GPIFの株買い」の実質的な効果が、日銀による多額の株式買いと同等であると考えて(それ自体は大きな間違いではない)、デフレ対策と景気対策を兼ねた大きな効果を持つと期待した人がいたのではないか。

怒りの矛先はピンポイントには厚労大臣
より広くは安倍政権に向けるべき

 もちろん、大きな意味では、塩崎厚労大臣の任命者かつ監督者である安倍首相にも責任があるし、安倍首相の意を受けて影響力を行使したとすれば、首相官邸や有識者にも、曖昧だが実質的な責任はあると考えられる。

 先のダイヤモンド・オンラインの拙稿末尾に読者に対するアンケートがあり、「7~9月期のGPIF運用実績が約8兆円の損失になったことに、あなたは怒りや不安を感じる?」という問いに対して、57.46%の読者が「感じる」と答えているが、「日経平均1000円の上下で、損得は4兆円」(国民1人当たり3万円強)という振れ幅について不満を感じるのであれば、その矛先は、ピンポイントでは塩崎厚労大臣に、より広くは安倍政権に向けられるべきだ。

 ただし、今後株価が急回復して公的年金積立金が急増した場合の「運用上」の主な殊勲者は再び「基本ポートフォリオ」であり、筆頭はこれを維持させた厚労大臣ということになる。

 また、例えば、2014年度には、GPIFは、収益率にして12.27%、収益額にして15兆2922億円の運用成果を上げている。損した時にだけ大騒ぎするのはフェアではない。

 とはいえ、「株価1000円で、4兆円」は、振れ幅としていささか大きすぎるのではないか、というのが個人的には率直な印象だし、多くの国民がそう思うのではないか。