負債によって資金調達をすることのメリットとデメリットは何でしょうか。負債の利息は所得から控除されるため、税金面ではメリットがあります。しかし、もしそうならば、誰でも借りられるだけ借りたいと思うはずです。

 では何が借金の歯止めとなるのでしょうか。それは、借金をする、というのは、税金面でのメリット以上にデメリットが大きいことです。債務超過となれば、成長戦略をあきらめなくてはならないし、資産も売り払わなくてはならない。競争優位性も失ってしまうでしょう。顧客は離れ、調達先からも逃げられてしまう。会社の運営そのものを危機に陥れてしまうのです。

 倒産事例では、倒産・再建の手法を学ぶだけではなく、負債を使って資金調達することのデメリットを学んでもらいます。それは、JALに限らず、どれも非常に生々しく、ドラマチックな事例ばかりです。だからこそ、私たちは必修科目で倒産事例を必ず教えることにしているのです。

さとう・ちえ
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院卒業(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタント として独立。2004年よりコロンビア大学経営大学院の入学面接官。近年はテレビ番組のコメンテーターも務めている。主な著書に『世界最高MBAの授業』(東洋経済新報社)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書) 
佐藤智恵オフィシャルサイト

佐藤 倒産事例では主にどのようなことを議論するのですか。

ケスター なぜその会社は債務超過に陥ったのか、あるいは、今後債務超過になるのを避けるにはどうしたらいいのか、を中心に議論していきます。

 また資産の構成や損益計算書などを読み解きながら、投資家の立場から、倒産しそうな会社を救済すべきかどうかも議論します。学生は、「この会社は財務さえ再建できれば、利益をあげられる可能性があるのだから、救済したほうがよいのか」、あるいは「もう再建の余地はないから、倒産させてしまったほうがいいのか」を考えて、意見を述べなくてはなりません。

日本特有のビジネス慣行を学べる
ベンチャーリパブリックも事例に

佐藤 ケスター教授はこれまで、コーポレート・ファイナンスや企業の合併・買収をテーマに、日本企業の事例を執筆されてきました。2015年5月には、旅行サイトを運営するベンチャー企業、ベンチャーリパブリックのケースを出版されました。なぜこのケースを執筆しようと思ったのでしょうか。