短期間で急拡大した
中国ペット市場
経済成長が続くことで、可処分所得が増加する。所得の増加は、生活必需品以外への出費増につながり、消費者の生活スタイルは変容する。前世紀末の日本、今世紀の中国が好例である。
本稿では、中国における生活スタイルの変容として、中国のペット市場に焦点を当てる。同市場の成長の背景には、経済成長に加え、日本同様の少子高齢化がある。
中国におけるペット市場の歴史はそれほど長いものではない。中国では1980年以降、狂犬病撲滅のため、家庭での犬の飼養は禁止されていたほどだ。
ペット市場形成の契機は1992年だった。同年、野生動物保護法が制定され、政府傘下の中国小動物保護協会が設立された。
その後、ペットフードの世界的大手のマース、ネスレ、ロイヤルカナンなどが中国での販売を開始した。法的に飼育規定が制定された2003年以降、生体取引やトリミングなどペット市場の川上から川下までのバリューチェーンが形成された。
中国ペット市場は歴史が浅いが、その規模は2015年の978億元(約1.9兆円)から、2022年には約3,000億元(約6兆円)に達した。楽観的予測では、2025年に約8,100億元(約16.2兆円)に達するとみられている。