>>(上)より続く

 また、今まで少子化対策が進まなかったのは、「それって大事だよね」で終わってしまっていたからです。消費税も安全保障もそうですが、本当にやらなければいけないと思ったことは、国論を二分するくらい考えていかないとダメです。今の少子化対策は、誰からも反対が出ない表面的なところで止まっています。このままでは、綺麗な精神論だけで終わってしまうのではないか、私はそれが心配なのです。 

――そうした状況を考えると、野田さんが「夫婦別姓」を唱えることにはかなり覚悟が必要だったでしょうね。

 そうですね。夫婦別姓に反対する人たちを説得する上ですごく大変なのは、「夫婦の絆が壊れてしまう」というような精神論に入ってしまいがちなこと。そもそも、みんな誤解しているところがあり、夫婦の姓を選択制にしようと言っているだけで、どちらか片方の姓に決めろと言っているわけではない。

 それに、夫婦別姓の歴史は明治時代以降のものであり、郵便局の歴史と同じです。その郵便局も民営化という改革がなされたのに、明治時代の役人が決めた夫婦同姓を日本の伝統だと言い続ける保守の政治家たちがいます。私は合理的な考え方の人間なので、そういった意見には違和感を覚えてしまいます。

 ただ、保守的な政治団体の中には、「夫婦別姓に賛成すると選挙で応援しないぞ」と圧力をかけてくるところもあります。それを乗り越えられない政治家が、小選挙区制の導入以降、増えてきたのかもしれません。

自分でやってみてわかった
子育ては政治と同じくらい大変

――とはいえ、そうしたことを声高に唱えられる政治家は、実力的にも経験的にもそれほど多くないかもしれません。野田さんだからこそやれているというところも大きいと思いますが。

 そうかもしれません。確かに私自身、こうした問題を扱うには適格者だと思っています。私は安倍総理と同期で、国会議員として23年目になりました。その経験から、安倍さんに堂々と意見を言える立場ですし、総理に雇われているとも思っていません。

 また、自分自身が少子化対策のど真ん中にいることもあります。今、私の息子は5歳で、昨年10月にようやく保育園に入れました。子育ては政治と同じくらい大変です。それを身に染みて知っていることが強みだと思います。

――これまで、著書やテレビで野田さんの子育ての様子を知る機会がありました。政治家をしながら、さぞかし大変でしょうね。

 それは大変ですよ。ただ私は比較的自分の時間をコントロールしやすい立場にあるので、仕事と子育てが何とか両立できています。しかし、若い人たちは自分の時間を自分でつくれない。そして、給料が低いため子どもを預けることも難しい。これはもう試練です。子どもを育てることは素晴らしいことだけれども、大変なことでもある。その「リアル」をきちんと世間に伝えて行きたいですね。