IoTについては、本連載第41回 「IoTのビジネス価値―イノベーションにつなげるには」でも述べたが、非常に幅広い分野での適用が進みつつある。急速に普及が進むスマートフォンも、IoTという文脈で捉えると、人が常に持ち歩くIoTデバイスの1つといえる。IoTは、特に交通、医療、エネルギー、防災、防犯、住宅といった人々の生活に密着した分野、製造現場、倉庫・物流、店舗といった非オフィス分野の革新に大きく寄与するであろう。

 AIは50年以上も前から研究されているが、そのビジネス適用はまさに始まったところといえる。特に、現在の人工知能ブームの火付け役のひとつが「ディープラーニング」(深層学習)である。ディープラーニングはニューラルネットワークを多層化することで、学習を繰り返し、従来よりも高い精度を実現する機械学習方式のひとつである。ディープラーニングを利用した画像認識の精度は、2015年には人間の精度を超えたされており、それ以外にも行動予測、自然言語処理などにも応用が期待されている。

 ソフトバンク会長の孫正義氏は、人間の脳細胞に入っているニューロンの数と、ワンチップに入っているトランジスタの数が同じになる時、すなわち人間と人工知能が同等の処理能力になる時を計算したところ2018年となったと述べている。今後、IoT、ビッグデータ、ロボット工学などの周辺領域とともに応用範囲を拡大させ、あらゆる分野での活用が期待されている。2020年までの間に、AIは人間の認識、意思決定、推測・予測などの能力の一部を代替もしくは補完することで、現時点では予想できないような飛躍的な発展を遂げると考えられる。

 APIについては、本連載第44回「企業に“自前主義”からの脱却を迫るAPIエコノミーとは何か?」でも述べたとおり、その概念は決して目新しいものではない。コンピュータプログラムの機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用すること自体は、社内システムの開発などで当たり前のように使われてきた考え方である。

 ここにきてあらためてAPIが注目されているのは、政府・自治体、公共サービス、民間企業などが、保有するシステムやデータベースのAPIを公開する動きが活発化したことでAPIエコノミーと呼ばれる新たな価値連鎖が形成されつつあるからである。これから展開されるビジネスの多くは、1社完結したモデルではなく、外部のパートナーや顧客を巻き込んだものとなるだろう。デジタルビジネスやプラットフォームビジネスを展開するにあたっては、全てを自社でゼロから開発することは一般的ではなくなり、APIを利用して既存のサービスを活用する場面が増えると考えられる。

 また、Webサービス事業者やネット企業以外の一般の事業会社が、自社のコア事業の強みを活かしてAPIエコノミーの提供元となるケースも増えるだろう。前に述べたIoTやAIについても、これらをAPIを介してつなぐことによって、新たなビジネスや価値連鎖が次々と創出されることが予測される。また、今後創出されるデジタルビジネスの多くは、公開された外部のAPIを活用して構築されたものであるか、もしくは自らの仕組みのAPIを公開するものとなるであろう。

 なお、こうしたIT技術の進展、とりわけ人工知能やロボット工学の発展によって人間が機械に職を奪われるのではないかという懸念を問題視する論調がある。これについて持論を述べるとすると、技術の進展が職を奪うことは避けられないと考える。

 これまでの歴史の中でも、自動車や鉄道の登場により、飛脚や人力車の職は奪われ、自動交換機によって電話交換手の職は奪われてきた。近年においても、自動改札機によって切符切りの仕事はなくなったし、看板やポスターを作成したり、設置する仕事はデジタルサイネージによって置き換えられている。デジタルカメラの登場によって写真のフィルム現像や紙焼きをする店が激減したことも記憶に新しい。