前回、「IT投資の効果を実感できない」という経営者に向けて、その解決策を解説した。今回はそれをさらに進めて、今後中堅企業がITを活用していくうえでの三つの課題を紹介する。
一つ目は「TCO(Total Cost of Ownership)の削減」である。従来からさんざん話題に上っているテーマではあるが、今後は新しい技術を活用してITコストを削減していくという視点が必要になるだろう。TCO削減の中心テーマは、システム開発よりも、保守・運用分野だ。
具体的に考えていくうえでのキーワードが「統合化」。多くの企業では、これまで個別にシステムが構築され、結果として、サーバやデータベースがあちこちに分散されてしまっている。それらを1ヵ所に統合し集中化すれば、保守・運用のコストを大幅に削減できる。
統合化の進め方としては、最新の高機能サーバを活用して物理的にまとめる方法もあるし、仮想化技術を使って、複数に分散されたリソースをあたかも一つのリソースプールのように扱う方法もある。
自らIT機器を持たずにITリソースを利用するクラウドサービスも、そういう意味では一種の統合化といえるだろう。
二つ目のポイントは「IT統制」である。
IT統制には、「ITを使った内部統制」と「IT部門の内部統制」という2通りの意味があるが、ここでいうのは後者である。ITだけでなく「人」という要素が対象となるだけに、IT部門の内部統制を完璧にすることは難しい問題でもある。システムの企画、開発、運用といった各工程を問題が発生しないように管理するためには、たとえばイレギュラーなメンテナンスや情報の持ち出しなどに対しても、厳密なコントロールが求められる。
逆説的に聞こえるかもしれないが、中堅企業にとってIT統制を実現する有効な解決策がアウトソーシングだ。