複合機 “ドル箱”崩壊#1PhotoEekhoff Picture Lab/gettyimages

リコー、キヤノン、富士フイルムホールディングスと名だたる日系企業が連なる複合機業界。ところが、オフィス需要が減退する中で市場の縮小は避けられそうになく、遠からず業界再編が行われることは必至の情勢だ。特集『複合機 “ドル箱”崩壊』の#1では、業界関係者への取材や各社の複合機事業への依存度などを基に「複合機業界再編シナリオ」を一挙公開。業績不振の米ゼロックス・ホールディングスの“買い手”や日系メーカーによる合従連衡の模様を大胆に予測する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

「日の丸9割」の複合機市場
業界では楽観論が広がるも先細り必至

 オフィスや官公庁、学校やスーパー、コンビニなど、今や至る所に設置されている複合機。実はこの市場は、極めて特異な構造をしている。詳細は次ページで述べるが、世界の複合機市場の「シェア9割」が日系メーカーで占められているのだ。

 各社の複合機事業を支えているのは、機器の販売による売り上げだけではない。プリントの枚数に応じた収入やメンテナンス費用など、一度機器を設置すれば継続的に各社にお金が入り続けるビジネスモデルが収益の源泉となってきた。

 しかし、である。そうした“ドル箱”事業に陰りが見えるようになってきた。

 以前から進みつつあったペーパーレス化に加え、コロナ禍でリモートワークが急激に浸透したことにより、複合機需要の減少が見込まれるためだ。

 市場の先細りを考えると、再編が取り沙汰されるのが自然だが、今のところ各社にそういった動きは見られない。業界大手のある会社で複合機事業を所管する執行役員は、自信ありげにこう語る。

「現時点では複合機事業で利益が出ているし、コロナもこのまま乗り切れそうなので、1社で十分事業を存続できる。当面は再編の必要を感じない」

 一方、株式市場の見方の中には、市場の先行きを不安視する声も少なくない。複合機業界に詳しいあるアナリストは、こう警鐘を鳴らす。

「企業がオフィスを更新する際、リモートワークを前提にするので複合機の設置台数が減っていくのは確実だ。複合機メーカーにはこれがボディーブローのように効いてくる。今のペースで需要減が続けば、2030年代に需要が半減していてもおかしくない」

 では、現状で再編の必要を感じていない複合機メーカーは、市場が縮小して事業存続が危ぶまれたときにどこと手を組むのだろうか。

 次ページでは、関係者への取材やデータを基に作成した「業界再編シナリオ」を公開し、大手メーカー同士の合従連衡を大胆に予測する。日本勢以外で唯一存在感を示している米ゼロックス・ホールディングスは、どこを傘下に加えるのだろうか。