日本の労働生産性は先進7ヵ国中最低で、ギリシャよりも低い――日本生産性本部の茂木友三郎会長が2014年度の集計結果公表に際して、「日本は勤勉な国で、生産性が高いはずと考えられるが、残念な結果だ」とコメントしたことが、年末から年始にかけて大きな反響をもたらした。

どれだけ社内の支援制度が充実していても、大企業の社員の子どもの数は低いのはなぜなのだろうか?

 多くの人が夜遅くまで頑張って働いている日本の生産性が、なぜそこまで低いのか?

 識者からは「ダラダラ残業の非効率性」や「サービス産業の低賃金」などの指摘が寄せられているが、通勤時間の長さも、そうしたマイナス要因に拍車をかけているのは間違いないことだろう。満員電車に1時間揺られて会社に来る人と、クルマや自転車で15分かからない人を比べてみれば、余力の違いは明らかだからだ。

 そして東京への通勤時間の長さは、子育てにも負の影響を及ぼしている。『日経ビジネス』2015年3月9日号の特集記事「日本を救う子宝企業」は、在京の大企業35社への調査で明らかになった現状の厳しさを、こんな見出しでまとめてみせた。「東京では1人しか産めない!」

 日経ビジネスの調査に回答した31社のうち詳細なデータ提供のあった4社の「子宝率」は、1.14~1.35。いずれも日本を代表する大企業で、模範的な育児支援制度を備えていながら、従業員が在職中に期待できる子どもの数は、全国最下位である東京都の合計特殊出生率1.15(14年)と比べても、ドングリの背比べだったのだ。

 その「日本を救う子宝企業」では、東京・静岡・福井の1122社から得られたデータをとりまとめてもいる。その集計結果は、予想を裏切るものだった。たとえば子宝率は従業員規模に反比例し、大企業になればなるほど低かったのだ。

 そして個別企業では、いずれも福井県の眼鏡メーカー(従業員20人)の2.34、建設業者(同36人)の2.22が高さで際立つ結果となった。

 要するに、こと子育てに関するかぎり、東京の大企業が最低で、福井県の中小零細企業が最高ということだ。しかしなぜ、そんなことになるのか?