今回の熊本地震でも、避難所での生活を余儀なくされ、十分な医療の支援を受けられていない方々がいる。被災地にいち早く医療を届けるべく活動する、徳洲会グループの災害医療支援チーム「TMAT」に同行取材した

何かとネガティブなイメージが報道されがちな徳洲会グループだが、災害医療支援チーム「TMAT」は多くの医療関係者が絶賛するほどの実力を持つ。今回の熊本地震でもTMATは、被災地で八面六臂の活動を展開している。ダイヤモンド・オンライン編集部では、TMATに同行して、その活動を追った。(取材・撮影・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 山本猛嗣)

TMATとは何か?
徳洲会の災害医療支援チーム

「本日(4月16日)、午後6時と午後8時をめどに、TMATの災害医療支援チームが続々と福岡の現地対策本部から熊本入りします。今なら取材の手配が可能です。チームに同行されますか」

 スマートフォンを通じて、民間の大規模病院グループの徳洲会、幹部U氏から緊張感に満ちた声が聞こえてきた。

 4月14日21時26分頃に発生した最大震度7の熊本地震。さらに16日未明に起きた地震(本震)により、被害が拡大していると聞き、私は日頃の取材を通じて、懇意にしている幹部U氏に「今回、TMATは派遣されるのか」と連絡をとったのだ。

 TMATとは、徳洲会グループが独自に組織している災害医療支援チームのことだ。グループ病院の規模を生かし、大災害が起きれば、国内外を問わず、緊急医療チームを迅速に組織して派遣しており、阪神淡路大震災以降、国内9回、海外13回の計22回の災害にチームを派遣(2015年1月時点)。徳洲会グループの医師、看護師、調整役の事務職など、これまで1000人超のスタッフを被災地に送り込み、活動してきた。 

熊本地震では家屋の倒壊による被害が多く、余震を恐れて学校の校庭に自家用車を停めて夜を明かす人も多い

 私は常々、機会があれば、このTMATのリアルな活動を取材してみたいと思っていた。

 というのも、私は以前に「週刊ダイヤモンド」で徳洲会の取材をしたことがある。徳洲会といえば、過去に病院開設を巡り、各地の医師会と激しい鞘当てを繰り返し、創業者の徳田虎雄氏や親族の選挙活動で多くの逮捕者を出すなど、何かとスキャンダルが絶えない病院グループでもある。このため、医療関係者の中では、猛烈に毛嫌いする人も少なくない。

 しかし、TMATへの評価となると、ネガティブな評価がほとんどない。普段は徳洲会に敵意を見せる医療関係者でさえも「さすがだ」と大絶賛するのだ。