今年の春、新聞や雑誌、テレビ報道を通じて「3D元年」なる言葉が頻繁に登場した。
映像を立体的に見せる3Dの最新技術を駆使した米映画「アバター」の大ヒットとも相まって、電機メーカー各社は3Dテレビの開発、新商品投入を積極化させた。また、パソコンでも3Dソフトが使用可能な商品が発表されるなど、「3D元年」の言葉に違和感はない。
ただ、実態はどうなのか。果たして3Dは電機業界の救世主と言えるのか。
「なんでもかんでも3D」の風潮は危険
先行した韓国のサムスン電子などの海外勢に続き、パナソニック、ソニーなど日本の電機大手も春先から3Dテレビの発売に踏み切った。この夏はシャープも新製品を市場に投入する予定で、内外の大手メーカーの関連商品が出揃うことになった。
米国の専門調査会社ディスプレイリサーチによれば、今年の全世界での3Dテレビの市場規模は250万台に達する見通しだという。
劇場公開された「アバター」が早々にDVD/ブルーレイ化されるなど、3Dならではの臨場感のある映像が家庭でも楽しめるようになったことが3Dテレビの出足を後押ししたことは間違いない。
「アバター」に続き、「トイ・ストーリー3」「ヒックとドラゴン」などの話題作も登場し、3Dのソフト、ハード両面の供給体制が整ってきた。ディスプレイリサーチは、3年後は同市場が2700万台程度、10倍以上の規模に膨らむと見ている。
だがその一方で、「『なんでもかんでも3D』の風潮が強まっているのは危険」(外資系証券アナリスト)との声も出始めている。
具体的には、「幼児向けテレビ番組の映画化、動きの乏しいスポーツなど、3Dにする必然性が感じられない作品まで、無理矢理に高付加価値化されている」(同)との懸念だ。このほか、「2Dで製作された映画を編集段階で3D化し、逆にクオリティーを低下させる作品も増えている」(広告代理店関係者)との見方もある。
この広告代理店関係者は、「ブルーレイは鳴り物入りで登場したが、シェア向上に苦慮している。それと同様に、3Dが今後伸び悩む公算もある」と見る。確かに「クオリティーに難アリ」のソフトが大量に出回ることになれば、「3D元年」の華々しい見出しが絵空事になってしまう可能性は否めない。