実は身近なところでも
ファイナンス知識が役立つ!
深田 『一生モノのファイナンス入門』の中には、視野を広げられるポイントがたくさんあると思います。たとえば「リスクフリーレート」の説明が書かれていましたが、「リスクがない投資案件の期待利回り=リスクフリーレート」「リスクフリーレートとしてよく使われるのは新発10年国債利回り」といった知識があると、信用力と金利の関係性に敏感になれるでしょう。
朝倉 確かに、事業にお金を出す人の期待リターンがリスクフリーレートを基準として「事業リスクが高いほど高く」「信用リスクが高いほど高く」なるという知識を持つことは、金利の水準を見る目を持つということにつながりますね。
[モーニングスター株式会社 代表取締役社長] 1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号取得 (MBA)。その後ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資産運用全般、子会社の設立および上場準備を担当。1998年、モーニングスター株式会社設立に参画し、米国モーニングスターでの勤務を経て、2004年より現職。第三者の投信評価機関として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。主な著書に『〈新版〉投資信託選びでいちばん知りたいこと』、『30代からはじめる 投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ともにダイヤモンド社)、『低迷相場でも負けない資産運用の新セオリー』(朝日新聞出版)がある。
深田 そう考えると、現在の金融市場において、個人というのは信用力がものすごく低いのに、担保があるとはいえ住宅ローンは変動金利なら0.625%、35年固定でも1.4%前後で借りられるわけですから、今の住宅ローン金利がいかに異常な低水準にあるかが実感できるのではないかと思います。
朝倉 確かに、今の異常な状況を客観的に捉えられれば「長期でずっと0.625%が続くはずはないのでは?」「量的緩和で市場にマネーがあふれていることを考えても、いずれインフレになって急激に金利が上がる可能性がある」というように考えを深めるきっかけにもできるでしょう。
生活を守っていくうえでも、こうしたファイナンスのベーシックな知識や、状況を分析するための考え方を知っておくことは役に立つと思います。
深田 個人を取り巻く市場環境についていえば、若い世代は高金利時代を知らないので「異常な低金利」などと言われてもピンと来ないところもあるのかもしれません。
家計相談やセミナーなどで30代の人と話をしていると、昔と違って上司と飲みに行くなどして「違う世代の考え方に触れる機会」が少なくなっていると感じるんです。バブルの時代は「会社のお金で上司と部下が飲みに行く」という光景がよくありましたが、今はそんな牧歌的な時代ではありませんし、会社の飲み会が会費制だと若い世代は「行きたくなければ行かない」となりがちなようです。
上司の「昔は良かった」といった嘆きを聞くこともあまりないんですよね。その意味では、『定年までにやるべき「お金」のこと』は若い世代の方にもちょっと目を通してみてほしいなと思います。 上司世代がいかに時代の変化の中で追い込まれてきたか、“悲哀”の実態を知っておくことも、自分が将来への備えを考えるうえでヒントになるはずです。