読まれないリリースなのに…
発信数で広報の評価が決まる無意味

「配布不要」を表明するメディアもある。今日、見聞きしない日はないほどホットなトピックスの領域を担う、ある業界の記者クラブでは、受付にメディアごとのデスクの配置図が掲示されている。その配置図には、「この席に配布」、「配布不要」などと記入されている。

 数えると、この記者クラブに加盟しているメディア20社のうち、8社が全く「配布不要」と宣言しているのだ。「もう、ニュースリリースには頼らない。自分の足で稼いでホットなニュースを掴む」、「紙のリリースはいらない。インターネットで必要な情報はゲットする」という気概と意志が伺える。

 それは、「しばり」の廃止にも見て取れる。「しばり」とは、記者発表やニュースリリースによる情報解禁日までは報道しないという「しばり」を、記者クラブ加盟メディアで申し合わせることである。そして、「しばり」の掟に反して、抜け駆けして記事にした場合には、記者クラブから脱退させられたり、記者室を使うことができなくなったりする制裁が待ち受けている。

 この記者クラブではこのほど、「しばり」を廃止した。「しばり」を設けても、すでに取材済みであれば「しばりの撤廃」を申し出ることができるし、制裁を覚悟で抜け駆け記事を掲載することも後を絶たず、「しばり」が有名無実化しているというのだ。

 すなわち記者は、ニュースリリースの体裁を整えて発信される頃には、そして、それも各社宛一斉に投函されたり配布されたりする頃には、そのニュースはニュース性を持たないことを、とうの昔からわかっているのである。

 記者は他社に先駆けて、いち早い情報提供を望んでいるにもかかわらず、企業の広報担当者の中には、もはや崩壊しつつある「しばり」を厳格にとらえて、「ニュースリリース発信までは個別の記者へ情報提供をしてはならない」と自ら情報管制を敷いているところもいまだ多い。古くから広報担当を務めている方に、その傾向が強いようだ。

 私はこの問題は、トンデモ人事の広報部門への蔓延であると思えてならない。黄ばんでうず高く積もれているニュースリリースの束を、投函の放送をしても誰もリアクションしてくれないことを、「配布不要」の掲示を、企業の広報担当者は毎回目にしている。にもかかわらず投函や配布をし、放送をし続けているのだ。

 何人かの企業広報担当者に、「なかなか記者の方のリアクションが得られなくて、たいへんですね」と、この状況をどう捉えているか聞いてみた。すると、「それが広報担当としての私の役目ですから、投函し続けます」「ニュースリリース発信数で評価されますから、がんばります」「記者のリアクションがないのは、当社のバリューがないためなので、しょうがないです」という、現状に疑問を持たない姿が浮かび上がってきた。

 また、「記者クラブのルールですから、記者の方が聞いていようが聞いていまいが、放送するしかないじゃないですか」「しばりが有名無実化していても、そのしばりを破ることを、企業側がそそのかしたら、たいへんなことになりますから……」とルールに盲従したり、厳格に捉えたりするリアクションが返ってきた。