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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国では義務教育でサイバー攻撃対策を教える

小学生ホワイトハッカー育成や兵役での選抜も

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第9回】 2016年6月13日
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オリンピックを控え
日本でも人材育成を

 北朝鮮が韓国にハッキングを行う目的は、専ら国や企業の情報の略取や業務の妨害であり、中国からのハッキングが主に金銭を盗むための情報収集であるのとは大きく異なる。

 世界屈指の電子政府を構築し、国民が住民登録番号をネットに登録してあらゆる行政サービスの便宜を享受している韓国だけに、敵国からのハッキングに対する脅威は並み大抵ではないことは理解してもらえるだろう。

 だからこそ、国民に子どもの頃からサイバーセキュリティ教育を徹底することはもちろん、韓国は、サイバーセキュリティに関する技能を身に付けた人材を社会において重用する仕組みも整えている。

 例えば、軍においては、ホワイトハッカーを「サイバーセキュリティ特技兵」として任用したり、その他の職業でも、女性のサイバーセキュリティ専門家が出産や育児でキャリアが途切れることを防ぐため、本人が希望すれば再教育を受けられ、復職や再就職がしやすいようサポートしている。

 産業全体においても、今後注力するIoT(モノのインターネット)分野のように、複数の製品や産業分野が融合する分野では特にサイバーセキュリティが重要になるため、現在、「融合産業セキュリティ強化のためのガイドライン」の制定が急がれている。もちろん、アメリカなど諸外国政府とのサイバーセキュリティ関連情報の共有協力体制もさらに強化していく。

 日本でも、行政機関などに対する海外からのサイバー攻撃は頻繁に発生している。2015年に日本年金機構への攻撃や「アノニマス」による攻撃が報じられたのは記憶に新しいが、警察庁の発表によれば、同年、添付メールによる攻撃やインターネットバンキングに関する不正送金被害が、いずれも過去最悪を記録したという。

 これらを受けて今年4月、「改正サイバーセキュリティ基本法」が成立。政府機関に加え、独立行政法人にも内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)によるセキュリティ監視の範囲が拡大されることなどが定められた。

 さらに日本政府は、2020年の東京オリンピックを見据えたサイバーセキュリティへの対策を打ち出して行くようだが、否応なしに世界の耳目が集まる一大イベントに際し、韓国がサイバーセキュリティ人材を広く育成することに本腰を入れている姿は、ぜひ、参考にしていただきたいと思う。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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